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投票 ― 早わかり「米国の選挙」

Q: 誰が米国の選挙を実施しているのか?

A: 米国の選挙は、それがたとえ連邦レベルの公職の選挙であっても、地方で実施される。何千人もの管理人(通常は郡または市の職員などの公務員)が選挙の準備と実施の責任を負う
これらの選挙管理人は重要かつ複雑な一連の仕事を行う。

  •  選挙日の決定
  •  候補者の適格性の認定
  •  有権者の登録と選挙人名簿の作成
  •  投票設備の選択
  •  投票用紙の作成
  •  選挙当日の投票を管理する大量の要員の採用
  •  開票結果の集計とその認定

ほとんどの米国の選挙はそれほど接戦にはならないが、時には僅差で勝敗が決まったり、選挙結果が無効であるという申し立てがあり、再集計されることもある。こうした事態は、2000年大統領選挙においてフロリダ州の一部で起こった。この選挙は米国史上、最も僅差の大接戦となり、多くの国民が選挙をめぐる無数の管理業務の存在について初めて考えることになった。
米国憲法は18歳以上の市民に選挙権を与えている。全米を網羅する有権者名簿というものは存在しないので、市民に有権者登録してもらい、地方政府が名簿を作成する。これは不正を防止するためである。過去においては、一部の市民(最も顕著な例は南部のアフリカ系米国人)の投票を妨害するために、差別的な登録手続きが採用された。今日では、投票権法によってこうした差別的措置は禁止されている。
各州はそれぞれ、登録要件を設定している。引っ越した市民は新しい居住地で登録し直さなければならない。州が登録を簡略化した時期もあれば、要件を厳しくした時期もあった。1993年の全米有権者登録法の制定で、州が発行する運転免許証の更新時に有権者登録ができるようになった。有権者に選挙当日の登録を認めている州もある。しかし最近では、政府が発行する身分証明書の提示を求めたり、選挙当日の登録を廃止したりする法律を可決した州もある。選挙管理人は、投票資格があり投票を希望する全ての市民を有権者名簿に掲載しなければならない。また、資格のない者(多くの場合、選挙権年齢に達していなかったり、管轄地区に居住していなかったりする者)を名簿から排除しなければならない。一般的には、地方の選挙管理人は、資格を有する可能性がある人を排除するよりは、たとえ最近投票していない人でもそのまま名簿に載せておこうとする。投票に来た人の名前が名簿に載っていないときは、仮の投票用紙を発行して投票してもらう。このような票の開票・集計は、その人の資格審査(一般的に選挙当日以後に行われる)が済んだ後に行われる。

選挙管理人は各選挙の投票用紙の作成にも当たらなければならない。さらに立候補の資格を有する全候補者が名簿に記載されていること、そして決定すべき事項が全て正しく書き出されていることを確かめなければならない。また投票用紙ができるだけ単純明快で、分かりやすいものになるよう努めなければならない。投票用紙について全米で有効な基準はないが、連邦法により管轄地区の一定の人口が第一言語として英語を話さない場合、選挙管理人は多言語の投票用紙を準備しなければならない。
紙の投票用紙に代わって自動投票機を使う場合は、その地域の選挙管理人がそれらの機器の選択・管理の責任を負う。また管理人は、選挙当日10~15時間の作業に当たる多数の臨時スタッフを雇い、訓練しなければならない。

 

Q: 米国民はどのように投票するのか?

A: 米国では単一の国家機関ではなく、複数の地方当局が選挙を実施するため、同じ州内でも地方政府によって投票用紙や投票に使われる技術が異なることがある。
今日では、有権者が紙の投票用紙の候補者名の横に「×」印をつけることはほとんどなくなった。というのも、多くの地域で光学システムが採用されており、投票者が丸の部分を塗りつぶしたり、線を入れたりした投票用紙を機械で読み取っているからだ。他にも機械化された多様な投票装置が使われている。
近年、州によっては有権者が投票日前に投票用紙を受け取る手続きを採用している。この傾向は不在者投票のための措置として始まり、投票日に自宅(および投票所)から遠く離れた場所にいると予想される有権者に対して投票用紙が発行される。一部の州および地方の管轄地区では、この措置が次第に拡大され、「永久不在投票者」として登録すれば、いつも投票用紙が自宅に郵送されるようになった。オレゴンとワシントンの2州では全面的に郵送による選挙が行われている。不在投票者は通常、記入した投票用紙を郵便で返送する。
投票日の最大で3週間前に、ショッピングモールなどの公共の場にある投票装置を使って投票することを認めている州もある。市民は自分の都合の良いときにこうした場所に立ち寄って投票できる。

 

Q: 期日前投票は投票結果に影響を及ぼすか?

A: 影響を及ぼすことはない。期日前に投票しても、その票の開票・集計は投票日の夜に投票が締め切られた後でないと行われないからだ。

したがって、どの候補がリードし、どの候補が後れを取っているといった情報が公式に発表されることはない。こうした情報は、選挙当日まで投票を待っている有権者に影響を与えかねない。
投票の締め切りまで票を正式に集計・公表しない点は、米国の全ての地方に共通している。
テレビ局は、国政選挙で投票をすませたばかりの人に対する出口調査を共同で行うことが多いが、近年出口調査は厳しく精査されている。

 

Q: 将来に向けて選挙の公正さを維持するための米国の取り組み  

A: 大接戦となった2000年大統領選挙の重要な教訓のひとつは、フロリダ州が直面した選挙管理や投開票をめぐる問題が、米国のどの場所でも起こり得るという点である。
いくつかの研究が委託され、さまざまな委員会が専門家の参考意見を聞き、改革の必要性についての証言を得た。
2002年、連邦議会は2000年選挙の問題点に対応し、新たな問題を未然に防ぐべく米国投票支援法を可決した。まず、連邦政府は、時代遅れになったパンチカード式やレバー式の投票装置を交換する州や地方政府にその資金を提供した。次に、選挙援助委員会を設立し、地方で選挙の技術的援助を行い、選挙管理人による投票装置基準の設定を支援した。同委員会では、投票装置や投票用紙のデザイン、登録方法、仮投票の方法、不正防止の方法、投票所スタッフの募集と訓練の手順、投票者の教育プログラムについての研究を行
っている。
米国投票支援法は、従来地方政府に任されてきた業務に関して、連邦政府の役割が大幅に拡大されたことを示す。しかし、導入された改革は米国の選挙プロセスへの信頼の回復に役立っている。

 

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