国務省出版物
気候変動解決へのパートナーシップ - 素晴らしいアイデアの連係がアフリカにオフグリッド電力をもたらす
リンジー・マデイラ
リンジー・マデイラは、世界銀行グループ内で民間部門の活動を支援する国際金融公社(IFC)のコンサルタント。2007年に「アフリカに光を」プロジェクトが発足して以来、その取り組みを支援している。
「アフリカに光を」の成功は、生まれたばかりの産業が成熟するのを支援し、新技術の本格的な商業化を実現する「中央で調整された官民一体の分散型イノベーション」の取り組みが、人々に直接的な恩恵をもたらすことを示している。こうした取り組みは、気候変動への対処においても同様の成功を収める可能性がある。
今日、世界中で16億人、アフリカでは5億人を超える人々が家庭での料理や照明といった基本的ニーズを満たすのに電気を利用できないでいる。その数は、アフリカでは今後20年間で7億人近くにまで増加すると推定されている。こうした人々は、料理や照明をほぼ全面的に燃料(多くの場合、木炭、木材、灯油)に依存しているが、そうした燃料は効率が悪い上に値段も高い。また、危険で、人間の健康を脅かし、温室効果ガス排出の原因にもなる。
照明は、家庭のエネルギー費用の中でも一番高くつく。アフリカの消費者は、照明用の灯油に100~170億ドルを費やしている。この状況を改善するため、公共・民間部門のパートナーは、この「ピラミッドの底辺」にいる人々に送配電網を使わないオフグリッドの近代的な照明製品を提供する「製品イノベーション」を促進するため、新しい分散型イノベーション・アプローチのモデルを構築中であり、マーケットメーカーの役割を果たしている。
民間部門だけでは市場を発展させることはできない
進んだ近代的照明技術には、灯油をよりよい消費者製品に置き換える潜在能力があるが、途上国では大きな障壁があり、これらの製品市場は閉ざされている。さらに、民間部門は、独力で市場を獲得する態勢が整っていない。
世界銀行と国際金融公社(IFC)の共同プログラムである「アフリカに光を」は、こうした問題に取り組むための国際協調を促進する「パートナー情報センター」の役目を果たす。「アフリカに光を」は、照明を手始めとして、追加的なエネルギーサービスにまで進出し、よりよい品質の照明製品市場を創出するために、民間企業と顧客との間の仲介役を務める。製品の改良開発とビジネスモデルの開発を支援することにより、灯油に代わる実用的で、手ごろな値段の製品の提供を後押しする。
「アフリカに光を」の重要な役割は、業界団体とその他の利害関係者、すなわち、非政府組織(NGO)、地方自治体、学界、金融機関、国際開発機関などの間に立って「仲介役」を務めることである。製品を購入者のニーズに合わせることにより、「アフリカに光を」は、さまざまな近代的照明製品の選択肢をアフリカの消費者に手ごろな価格で提供する手助けをし、彼らの生活改善および気候変動による影響の削減に大いに貢献している。
この分散型イノベーション・アプローチを通じて、以下に挙げるような、いくつかの障壁に対処してきたが、介入がなかったならば、そうした障壁が原因となり、サハラ以南アフリカ、南アジアその他の地域では、より良い照明製品市場の発展が妨げられていたであろう。
- 民間部門が市場機会を十分に認識することを阻んできた理解不足と高い取引コスト。
- オフグリッド照明の利点に対する消費者の認識不足、およびその結果としての、消費者の誤った購買判断。
- 製品品質保証および技術サポートサービスの欠如。その結果、製品が少なく、品質も劣るようになる。
- 輸入税、関税問題、持続可能な市場の創出を妨げ市場を歪める助成金など、政策上・規制上の障壁。
- ビジネスサポートサービスの欠如、およびビジネスネットワークやビジネスパートナーへのアクセスの欠如。
- サプライチェーンファイナンスへのアクセスが限られ、その結果として、購買力が低下。
対応
「アフリカに光を」は、マーケケット情報と消費者教育、ビジネスサポートサービス、および政策運営と公共部門の運営を提供することにより、障壁を減らし、迅速な市場加速化を促進する。その中でも最も良く目に見えるサービスのうちの2つは、品質保証と資金援助へのアクセスの提供にかかわっている。
品質保証については、多方面にわたる取り組みにより、製造業者が高品質の製品を設計できるようにし、粗悪な商品を購入しないよう消費者を保護する。「アフリカに光を」は、製造センター(そのほとんどはアジア)近くの検査所を認定し、製造業者が自社製品を「迅速に審査」できるよう地元の大学に検査を行う施設を建設する。同プロジェクトはまた、地元の規制当局と協力し、新設の「国際利害関係者協会」と連携して、購入者が十分な情報を得た上で判断できるように、「品質保証マーク」を開発する。
「アフリカに光を」は、商業金融機関と提携して、この分野のビジネス機会について商業金融機関の教育を行なう。また、商業金融機関がサプライチェーン全体を通じて参加者に融資を行う際の指針とするための卸売資本とリスク軽減ツールを提供する。さらに、途上国でプロジェクト資金を提供するE+Coやアキュメン・ファンドのような組織に、直接融資を行うことも検討中である。
マイクロファイナンス機関と提携し、モバイルバンキングのイノベーションを活用することも、消費者がこれらの製品の購入資金をより容易に調達できるよう後押しする。本プロジェクトの戦略は、援助資金提供者による往々にして限定的で短期間の資金拠出に依存するのではなく、効率的で、炭素排出量削減効果のある製品を消費者が手ごろな価格で購入できる、自立した市場を創出することである。
成果
本プロジェクトによる支援がサハラ以南アフリカにおいて、近代的なオフグリッド照明市場の多くの部分の成長に一役買ったことは、初期の段階の結果が示している。2008年、この市場に特化して開発された製品は10種類に満たなかったが、現在では、50社が製造する70種類を上回る製品がアフリカの小売店の棚に並んでいる。2008年にはまた、価格が50ドルを超す製品が市場を独占していたが、現在は、多くの良質の製品が25~50ドルで小売りされている。持ち運びのできるソーラー照明の製造コストは、太陽電池(PV)、バッテリーおよび発光ダイオード(LED)の価格の下落を大きな原因として、1年で40%下がると予想されている。
「アフリカに光を」の成功は、生まれたばかりの産業が成熟するのを支援し、新技術の本格的な商業化を実現する官民一体となった協調努力が直接的な恩恵をもたらすことを示している。また、「アフリカに光を」は、ハイリスク環境で緊急に必要とされる製品を開発し、流通させることを目的としたこの種の協調活動を促進する上で、中立の国際機関が果たすことができる重要な役割を示す素晴らしい例でもある。
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※本稿に示された意見は、必ずしも米国政府の見解あるいは政策を反映するものではない。
出典:eJournal “Climate Change Partnerships”
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。