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21世紀の農業 – 植物の遺産

植物の遺産

国際社会は、植物界の遺伝子という富を守るため、協調して取り組みを進めている。

何十万種類にも上る種子や植物のサンプルが、気候変動や生息環境の喪失のため、また自然災害または人災により失われるのを防ぐため、その保護と保全を図る取り組みが現在行われている。

将来における発見の可能性を維持し、今日の作物の保全を図ることが、この取り組みの動機づけになっている。科学により植物の遺伝子情報の組み換えが 可能になり、ある植物の望ましい特性を抽出して、それを別の植物へ挿入するようになった。こうした形のバイオエンジニアリングは、農家が何世紀にもわたっ て行ってきた他家受粉による交雑を加速するものである。今日の科学の力を考えると、どこにでもあるあらゆる植物がいつか人間を助ける生物学的な秘密、例え ば、病気の治療法、強化食品、あるいはその他の役に立つ合成物を持っているかもしれないとう認識が高まる。

 「食糧と農業のための植物遺伝資源は、世界の食糧安全保障に生物学的な基盤をもたらし、地球に住むすべての人の生活を支える」と、国連の植物遺伝 資源保護計画に関する文書は述べている。1996年に発表されたこの文書は、植物の多様化に対する国際社会の関心と責任を記録にとどめている。

国際的な取り組み

国際的な農業研究のための連合体があり、世界11カ所の遺伝子バンクを支援して、農作物、飼料、灌木、樹木の65万を超える遺伝子のサンプルを保護 し、それを公有のものとして管理している。この「国際農業研究協議グループ」(CGIAR)の目的は、「これらの収集物を長期的に保全し、その生殖質(1 つの生物の遺伝資源の集積)および関連情報を地球公共財として利用可能にする」ことである。

CGIARは、そのウェブサイトによると、これらの種子と植物の膨大な宝庫を全人類の利益のために維持しており、「この中から提供された種子は、ア フガニスタンやアンゴラ、モザンビーク、ソマリアなど紛争から抜け出しつつある国で農業の成長を活性化し、復興の基礎を築くのに役立った」と述べている。 自然災害に襲われた地域は、遺伝子バンクから貴重な種子を取り出し、その地域固有の気候と条件に独自に順応する植物を復活させることが可能になる。

米国の取り組み

 「米国国立植物生殖質システム」(NPGS)は、遺伝子バンクのネットワークを維持し、害虫、病原菌、病気、その他の世界の食糧と繊維の供給への脅威との闘いに使える遺伝形質の保全を図っている。

NPGSの収集物には、米国農務省農業研究局(ARS)の権限下にある20カ所を超える遺伝子バンクに保存されている約51万1,000の種子、組織、および植物全体のサンプルが含まれている。これらの遺伝子バンクの多くは、大学や各州の農業試験場の支援を受けている。

 

wwwj-ejournals-agriculture15aメキシコで野生トウモロコシの種子を選別する「国際トウモロコシ・小麦改良センター」の技術員。同センター は、固有の特性を持った数千の種子のサンプルを北極で安全に貯蔵するため、スバールバル世界種子貯蔵庫に送りだしている(© AP Images/Eduardo Verdugo)

サンプル中の有用と確認された形質は米国の作物に組み込まれ、作物を危険な病原体から守るのに役立っている。例えば、1948年にトルコで収集され た小麦は、その15年後に米国の作物を脅かした菌類の一種に耐性を示した。その遺伝的特徴は、ARSの文書によると、現在では、米国太平洋岸北西部で栽培 されているほとんどすべての品種の小麦に組み込まれているという。

1986年には、ロシアの小麦につくアブラムシが米国にまで広がり、米国全体の小麦の作柄に深刻な影響を与える恐れが生じた。ARSの科学者は NPGSが保管する小麦粒の緊急試験を行い、耐性を持つ可能性がある遺伝子を数百種類発見した。そして、集中的な取り組みにより、耐性を持つ品種が開発さ れ、小麦をめぐる作物危機は回避された。

凍結状態で保存される種子

ノルウェー本土の北1,000キロの北極圏では、平均気温が低いため、氷点下の気温を維持するのに電力を必要としない。この北極圏の永久凍土層と厚 い岩盤に囲まれた山腹を掘って造られた「スバールバル世界種子貯蔵庫」は、世界各地から集めた数十万の種子のサンプルを冷凍隔離状態で保存しており、事故 や災害によって、温かい気候の地域を原産とする種子を補充する必要が生じた場合に使われる。

スバールバル貯蔵庫は、ノルウェー王国が国際的な協力を得て建設し、「世界作物多様性トラスト」が運営に当たっており、植物多様性を守るための世界 最後の保険である。世界各地の遺伝子バンクは、自らが備蓄するものと重複する種子のサンプルをこのスバールバル貯蔵庫に預けて保管を依頼する。同貯蔵庫 は、サンプルの紛失、管理上のミス、資金の枯渇など予見不可能な組織上の失敗があった場合に備えて、どこか他の遺伝子バンクがバックアップのサンプルを保 管するような措置をとっている。

2008年のスバールバル貯蔵庫開設以来、米国生殖質システムは2万種を超える植物のサンプルを同貯蔵庫に送り保管している。米国は、今後数年間かけて、収集済みの全植物のサンプルを徐々に送ることにしている。

世界作物多様性トラストは、主要農作物の収集を支援するための資金を募る官民パートナーシップである。同トラストは、国際的な植物多様性協定に合わせて、植物遺伝資源の長期的保全を目的とする効率的で持続可能な地球規模のシステムを推進する活動を行っている。

地球に存在する植物はきわめて多様であり、人間がそのすべてを把握して定量化するのは難しい。既知の植物種の数はおよそ30万から40万と推定され ているが、遠隔地の森林や山々の高所には、何千もの未知の植物種が生息し、その固有性を認識する科学者によって発見されるのを待っている可能性がある。

 

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出典:eJournal”21st-CenturyAgriculture”
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

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The Legacy of Plant Life