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早わかり「米国の選挙」- 米国の選挙手続き

米国の選挙手続き
テキサス州オースチンで、新しい投票の注意書きを見せる選挙事務員 (©Harry Cabluck/AP Images)

テキサス州オースチンで、新しい投票の注意書きを見せる選挙事務員 (©Harry Cabluck/AP Images)

米国の選挙では、数千人の管理人が、選挙の準備と実施に責任を負い、さらに開票結果を集計し、それを認定する。これらの選挙管理人は、選挙日の決定、候補者の資格の認定、有権者の登録、選挙人名簿の作成、投票設備の選択、投票用紙の作成、選挙当日の投票を管理する大量の要員の採用、さらに開票結果の集計とその認定など、重要かつ複雑な一連の仕事を行う。

ほとんどの米国の選挙はあまり接戦にはならないが、時折、僅差で勝敗が決まったり、その結果に異論が持ち上がったりする。米国史上最僅差の大接戦となった2000年大統領選挙は、当選者の決定に手間取り、こうした選挙管理上の多くの問題が、初めて国民の前にさらけ出された。

米国の投票には2段階のプロセスがある。全国的な有権者名簿というものは存在しないので、市民はまず登録して有権者の資格を得なければならない。有権者登録は現在の居住地で行う。ほかの土地へ引っ越した場合には、新しい居住地で登録し直す必要がある。登録制度は不正を防止するために設けられたが、有権者登録の手続きは州によって異なる。過去においては、一定の市民(その最も顕著な例は南部のアフリカ系米国人)が選挙に参加するのを妨害するために、選択的登録手続きが利用された。最近では、登録の規制が緩和される傾向にある。例えば、1993年の全米有権者登録法の制定で、運転免許の更新時に登録できるようになった。

選挙管理人の最も重要な仕事のひとつは、投票資格のある者を全員有権者名簿に載せ、資格のない者は誰も名簿に載せないことを、確実に実行することである。一般的に、地方の選挙管理人は、潜在的有資格者を間違って排除するよりは、たとえ最近投票していなくてもそのまま名簿に載せておこうとする傾向にある。投票に行った人の名前が名簿に載ってないときには、仮投票用紙でその投票を記録する。あとでその人の資格が審査されたのち、票として数えられる。

運転免許取得の申し込みと同時に有権者登録を行うロードアイランド州の若い女性 (©Robert E. Klein/AP Images)

運転免許取得の申し込みと同時に有権者登録を行うロードアイランド州の若い女性 (©Robert E. Klein/AP Images)

選挙の管理

これまで見てきたように、米国の選挙は、たとえ連邦レベルの公職選挙であっても、地方で管理運営される。そして前述したように、選挙管理人(一般的には郡または都市の公職者か事務官)には気の遠くなるような大変な仕事がある。一年を通じて有権者登録を受け付け、特定の選挙で投票する資格があるかどうかを決定しなければならない。さらに、各選挙の投票用紙を作成し、資格のある全候補者が名簿に記載されていること、そして決定すべき争点がすべて正しく書き出されていることを、確かめなければならない。また投票用紙ができるだけ単純明快に分かりやすいものになるよう努めなければならない。

現在のところ、投票用紙に全国的な標準書式はない。投票権法の下で、人口の一部が一次言語として英語を話さない場合、選挙管理人は複数言語の投票用紙を準備しなければならない。地区によっては、投票用紙に記載される候補者と政党の順番を無作為に割り当てなければならないところもある。最後に、地方の選挙管理人は特定の投票用機器を選ぶが、投票用紙はその装置に合わなければならない。

選挙のないときには、選挙管理人は投票装置の保管と維持に責任を持つ。選挙管理人の最も難しい仕事のひとつは、大量の臨時スタッフを雇い、選挙当日に長時間(通常は10〜15時間)働く訓練をすることである。

投票の種類

このように、選挙に際しては、公正で合法的かつ専門的な準備に労力が注ぎ込まれる。投票機器や投票用紙は、通例、地方レベルで購入されるので、投票に使用される機器の種類や状態は、その地方の社会経済的状況や税基盤と関係してくる場合が多い。地方の税収入は、学校、警察、消防、公園、娯楽施設などにも使われるから、投票技術への投資の優先順位は低くなりがちだった。

米国にはさまざまな種類の投票装置があり、投票技術の分野は絶え間なく変化している。今では、投票用紙の候補者名の横に「×」印を付けて、自分で投票箱に入れる投票方式を採用しているところはほとんどなくなったが、コンピューター化された方式でも、まだ投票用紙に頼って、用紙の丸の部分を塗りつぶしたり線でつないだりさせることが多い。投票用紙はその後機械で読み取られ、投票が記録される。この装置は「光学読み取りシステム」として知られる。

地区によってはまだ「レバー」式の機械を使っているところもある。投票する人は機械を前にして、自分が支持する候補者の隣、または争点となっている問題のわきに取り付けられた小さなレバーを動かすのである。もうひとつ、「パンチカード」式の機械も広く使われている。この機械にはカード式の投票用紙が使われ、候補者名の横に穴を開けるか、投票用紙と同様に候補者名の並んでいるホルダーに挿入してから穴を開ける。この方式は2000年大統領選挙の際、フロリダ州の票集計で物議を醸した。その結果、多くの地域でパンチカード方式が廃止された。米国投票支援法は、レバー式およびパンチカード式の機械を他の投票装置と取り換える地区に、任意の資金援助を行った。

最近の傾向は、直接記録電子(DRE)装置の採用へ向かっている。これは銀行の自動預支払機に似た画面を使うタッチパネル式の装置で、コンピューター・セキュリティの専門家が、システムのセキュリティ問題を解決するために改良に取り組んでいる。

ここ数年の投票で大きく変わったのは、有権者が選挙前に投票用紙を入手できる手続きが採用されたことである。この傾向は不在投票のための措置として始まり、選挙当日に自宅(および投票所)から遠く離れた場所にいると予想される有権者に対して投票用紙が発行される。一部の州および地方の区域では、この措置が次第に拡大され、「永久不在投票者」として登録すれば、いつも投票用紙が自宅に郵送されるようになった。オレゴン州では全面的に郵便による選挙が行われているが、今のところ、そうした州はほかにない。不在投票者は通常、記入した投票用紙を郵便で送り返す。

もうひとつの新しい措置は「早期投票」である。選挙当日以前の3週間以内に、ショッピング・モールなど公共の場に投票装置が設置され、市民は都合のいいときに立ち寄って投票することができる。

<divclass=”subhead1″>票の集計

2004年ニューヨークで、故障した投票装置の修復を辛抱強く待つ有権者たち (©Bebeto Matthews/AP Images)

2004年ニューヨークで、故障した投票装置の修復を辛抱強く待つ有権者たち (©Bebeto Matthews/AP Images)

票の集計は選挙当日に行われる。早期投票が普及しつつあるとはいえ、その票は、投票が締め切られたあと集計が始まるまでは数えられない。従って、どの候補がリードしてどの候補が後れを取っているか、正式に発表することはできない。早い段階で投票結果の情報を流すと、選挙の最終段階に影響を与えることがある。

改革運動

2000年大統領選挙の明白な教訓のひとつは、フロリダ州が直面した選挙管理、投票、票集計の問題は、米国のどの地区でもある程度起こり得る問題だったということである。いくつかの研究が委託され、さまざまな委員会が専門家の参考意見を聞き、改革の必要性についての証言を得た。

2002年、連邦議会は米国投票支援法(HAVA)を可決した。この法律には特筆すべき要素がいくつか含まれる。まず、連邦政府は、時代遅れになったパンチカード式やレバー式の投票機を取り換える州や地方自治体に、その交換資金を提供した。次に、選挙援助委員会を設立し、地方の選挙管理人に技術的援助を行い、投票装置の基準を確立した。この委員会は、ほかにもいろいろある中で、特に投票機器や投票用紙デザイン、登録方法、仮投票の方法、不正防止の方法、投票所スタッフの募集と訓練の手順、投票者の教育プログラムなどを研究するための体制づくりに取り組んでいる。

連邦政府は、従来地方レベルの行政的問題とされてきた事柄にはあまり関与しなかったが、HAVAはそうした方向から大きく逸脱することを意味する。しかし、こうした手続き上の改革努力は、米国人が自分たちの選挙制度を信頼していることを再確認するのに役立った。そして、選挙が民主主義を正当化する根拠になっていることを思えば、そのためにかかるコストはわずかなものである。


出典:USA Election in Brief
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

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