国務省出版物
早わかり「米国の選挙」- 大統領選挙
大統領選挙
米国では、連邦政府の一部の公職と、州および地方自治体の大部分の公職については、偶数年に選挙が行われる。また、州および地方自治体の管轄区域によっては、奇数年に実施される選挙もある。
例えば、米国の正副大統領選挙は4年ごとに実施される。米国民は2年に1度、連邦議会の下院議員435名全員と、上院議員100名の約3分の1を選出する。上院議員は、期間をずらしながらそれぞれ6年間の任期を務める。
米国は複雑な連邦制統治システムに頼っており、そこでは中央政府が中心をなす。しかし同時に、州および地方自治体政府も、連邦政府の権限外にあるさまざまな問題について、権力を行使する。州および地方自治体は、その管轄区域内における選挙の実施方法に関してはさまざまな度合いで独立性を認められているが、巧みに管理された重要な選挙を頻繁に行っている。
米国の選挙のタイプ
基本的には、総選挙と予備選挙という2つのタイプの選挙がある。予備選挙は、総選挙に出馬する各党候補者を決めるために、総選挙に先立って行われる。予備選挙で勝った候補者は、その政党を代表して総選挙へと進む(ただし、その政党の代表となるまでに、さらに数段階のプロセスか必要な場合もある)。
予備選挙は、20世紀の初めから、政党を代表する候補者を選ぶための主要な選出方法となっている。きわめて稀有な例を除いて、予備選挙で勝利すれば、そのまま総選挙における政党公認候補者として指名されることになる。少数の州ではあるが、伝統的に、あるいは政党の選択によって、党の候補者が州の予備選挙ではなく、州または地方レベルの党員集会で選出されるところもある。
予備選挙や党大会が終わると、総選挙が実施され、公職に就く者が選ばれる。有権者は総選挙で、投票用紙に記された党候補者の中から最終的に判断し、投票する。総選挙の投票用紙には無所属の候補者(大政党に属していない候補者)の名前が含まれることもある。それらの候補者は、伝統的な予備選挙ではなく、一定数の署名を集めた請願書を提出することによって、投票用紙に名前を載せることができる。さらに、政党の指名もなく、請願書による資格もない候補者を支持する有権者のために、投票用紙にその名前を記入するスペースを設けている州もある。こうした候補者たちは「自薦」候補と言われ、時折、選挙で勝利を収めて公職に就くことがある。
米国の選挙は、公職者の選出だけではなく、それ以上の事柄に関係する場合がある。一部の州や地方自治体では、選挙の際に社会政策についての問題が提起され、投票によって有権者にその是非を問う。州議会または地方自治体の議会や委員会により有権者に委ねられる問題(住民投票)と、市民の請願により投票にかけられる問題(住民発議)とがあり、通常、債券発行に関する(公共事業のための借金に同意する)ものだが、ほかにも政府に対して権限を委譲もしくは制限するものもある。過去数十年間で、こうした住民による投票が、とりわけ州の予算や政策の分野に大きな影響を与えてきた。中でも最も有名なのが、カリフォルニア州の教育制度に関する住民投票である。
連邦レベルの選挙に加えて、州および地方自治体の選挙も偶数年に行われ、一部の州および地方では、大統領選挙などの大きな選挙のない奇数年に選挙を行うところもある。また多くの区域で、特別の選挙に備えて手はずが整えられている。例えば選挙で選ばれる公職に急な欠員が出て、その空席を埋める場合など、特定の目的を果たすために、時を選ばず選挙の日程が組まれる可能性があるからだ。
大統領選挙
米国の大統領選挙は、4年に1度、11月の第1月曜日の翌日の火曜日に実施される。この本選に先立って、各州で予備選挙または党員集会が行われ、党の大統領候補を選ぶ全国指名大会へ送る代議員を選出する。こうした各州の予備選挙や党員集会は、だいたい1月から6月にかけて行われ、7月か8月か9月に党の全国大会が開かれる。
1970年代以降、2大政党が最終的に指名する大統領候補は、全国大会以前に判明する。予備選挙や党員集会のシーズン終了前に、その候補者はすでに代議員の過半数を獲得しているからである。その結
果、全国大会は主として儀式的イベントの意味合いが濃くなった。大会のハイライトには、党指導者による基調演説、指名を受けた正副大統領候補者の発表、各州代議員団による代議員票の点呼、党綱領(さまざまな争点に関する党の立場を述べた文書)の承認が行われる。各党全国大会は、テレビ放映される政治イベントとして、また本選挙を戦うスタートとして、自党の指名候補を売り込み、ライバルとの違いを明確にするチャンスなのだ。
実際に票を投じる有権者の割合は選挙によって異なるが、投票率は(大統領選挙ですら)他のほとんどの民主主義国より低い。1960年以降、投票率は全般的に低下し続け、1960年の64パーセントから1996年には50パーセントをかろうじて超えるところまで落ち込んだ。もっとも、前々回および前回の選挙では、60パーセント強まで回復している。米国の投票率が比較的低いのには、いくつか理由がある。一部の民主主義国とは違い、米国の選挙で投票するには、自分で有権者登録をしなければならない。有権者登録のプロセスは州によって若干異なる。また、投票は自由意志で行うもので、一部の国で見られるように、強制ではない、という理由
もある。選挙で選ばれる公職は、米国全体で推定100万以上あり、それらの役職を埋めるのに必要な選挙の数があまりにも多いので、有権者が疲れ、投票率の低さにつながっているという可能性もある。
統計が示すところによると、国民が政治状況に満足している場合、あるいはさまざまな世論調査である候補者の勝利が必至であることが指摘されている場合には、投票率が下がる傾向にある。逆に、候補者同士が大接戦を演じていると考えられる場合、あるいは論議の的になっている問題が投票にかけられる場合には、投票率が上がることもある。
候補者の条件
公選による連邦議会および連邦政府の役職に就くには、それぞれ異なる資格が必要とされ、それについては米国憲法第1条と第2条に明記されている。例えば、大統領候補は、米国生まれの市民で、35歳以上、14年以上米国に住んでいる者でなければならない。副大統領も同じ条件を満たす必要がある。また米国憲法修正第12条に基づき、副大統領は大統領と同じ州の出身であってはならない。
連邦議会の下院議員に立候補するには、25歳以上で、7年以上米国市民でなければならず、また選出される州の合法的住民でなければならない。上院議員候補は、30歳以上、9年以上米国市民であり、選出される州の合法的住民でなければならない。州または地方自治体の公職を求める者は、それらの地区が定める条件を満たさなければならない。
米国憲法修正第22条(1951年確定)は、いかなる者も2回を超えて米国の大統領に選ばれることを禁じている。しかし、連邦議会の下院議員および上院議員の任期については、憲法による制限はない。ただし、さまざまな政治団体が長年にわたってそうした制限を設けるよう議員に働きかけている。州および地方自治体の公職に適用される任期制限は、そのような制限がある州の憲法や地方条例で詳しく規定されている。
出典:USA Election in Brief
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。