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21世紀の農業 – はじめに
はじめに
人類の最も長い闘いは現在も続いている。それは自らを養うのに十分な食糧を確保する闘いであり、人類はこの闘いをさまざまな武器を使って多方面で展 開してきた。英国の学者、トーマス・マルサス(1766〜1834)は、人類に勝ち目があるとは思わなかった。マルサスは1798年の著述で、「人間の数 がその生活手段を上回る時期が到来してからすでに久しい」という結論を下し、その結果は「窮乏と悪徳」であろうと予測した。全体的に見ると、マルサスの 言ったことは、少なくとも現在までは、間違っていた。インド生まれのノーベル経済学賞受賞者、アマルティア・センが1994年に指摘したように、世界の人 口は同年までに、マルサスが最初に「人口論」を発表した時の6倍近くに増えていた。それにもかかわらず、1人あたりの食糧消費量は増加し、平均余命は伸 び、生活水準も一般的には向上していた。その重要な要因の1つは、農学者でノーベル平和賞受賞者のノーマン・ボーローグ(1914〜2009)が先鞭をつ けた「緑の革命」であった。ボーローグの名は、本号の記事に繰り返し登場する。
しかし、人口と食糧供給の対決にはまだ決着がついていない。「世界の人口が10億人に達するまでに何百万年もかかった。世界人口はその後、123年 で20億人に、33年で30億人に、14年で40億人に、13年で50億人にそれぞれ達した…」とセンは書いている。世界の人口は現在、推定で68億人、 このうち10億2,000万人が栄養不足状態にあると推定される。世界の人口を養うことのできる21世紀の農業を私たちはどのようにして構築するのか。そ れが、『eJournal USA』本号のテーマである。
優れた技術能力と農業技能が結合すれば、多くの面で前進が期待できる。すなわち、食糧はより豊富になり、その多くが健康の増進に役立つものになり、 しかも、この豊かさをより多くの人々がグローバルな市場で享受することが可能になる。さらに言えば、農業は新しい形のクリーンエネルギーを実現する鍵を 握っている。
本号に意見を寄せた人々の中には、科学者、政府当局者のほか、インドおよび米国出身の「世界食糧賞」受賞者もいる。これらの人々はすべて、ボーロー グ博士がノーベル賞受賞演説で述べた、飢餓との闘いにおける「膨大な軍隊」の一部として団結している。もっと視野を広げて言えば、21世紀の農業は、人間 が持つ集団的な知恵の壮大な応用の見本ということになる。この闘いにおける勝利が近いことを祈りつつ。
編集部
出典:eJournal “21st-Century Agriculture”
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。