国務省出版物
最良の燃料としてのエネルギー効率 – エネルギー効率化を受け入れる石油会社
エネルギー効率化を受け入れる石油会社
パトリック・クロウ
大手石油会社は大規模な広報キャンペーンに資金を提供し、消費者にエネルギーの節約を勧めている。企業が自社の販売する製品の消費を減らすようわれわれに要請することは、企業の取り組みとしては一般的ではない。しかしこのことは、エネルギー経済にかかわるすべての主要当事者がエネルギー効率化と省エネの問題を真剣に考えていることを浮き彫りにしている。
本稿の筆者であるパトリック・クロウは、石油ガス専門誌の記者として、連邦議会と連邦政府諸機関を21年間にわたって取材してきた。クロウは現在、テキサス州ヒューストンを中心にフリーのライターとして活動しており、エネルギーや化学製品、水などのテーマに専門的に取り組んでいる。
米国の大手石油・ガス企業はエネルギーを売るのがビジネスだが、今日では、消費者にエネルギーの利用を減らすよう促している。
これらの企業は、スピーチ、広告、支持団体、奨励金など数多くの広報手段を用いて、エネルギー効率化に賛成であることを宣伝するキャンペーンを行っている。彼らは、長年にわたってエネルギー効率化を提唱してきたが、今や、これまでよりずっと声高に、また熱心にそれを提唱するとともに、エネルギー価格上昇に反対する消費者の戦いおける同盟者であることを印象付けるのに必死である。
石油・ガス企業は、(住宅所有者が暖房を弱めてセーターを着るといった)個人の工夫による省エネを奨励しているわけではない。むしろ、(これまでより少ない燃料で済む暖房炉を住宅所有者が設置した場合の)エネルギー効率の良さを宣伝しているのである。
環境・エネルギー研究所のキャロル・ワーナーは、eJournalUSAのインタビューで、原油価格の高騰がこの傾向に大きく関係していると語った。「去年(2008年)、原油価格が急騰し、経済システム全体に衝撃を与えたことから、激しい怒りが石油会社に向けられました。石油会社にとって、エネルギー消費の削減を話題にすることは、そうした怒りの一部をそらす方法のひとつだったのです」
こうした一般向けの広報活動が、原油価格の継続的な上昇――2007年半ばの1バレル当たり60ドルから2008年半ばの最高147ドル――と並行して行われたのは確かだが、石油価格はその後、1バレル当たり100ドルも急落した。しかし、石油会社による広報活動は下火になることなく続けられている。
「これらの企業は絶えず自己改革を進めており、新しい技術の開発に関与することを望んでいます」とエネルギー政策研究財団のアナリスト、ラリー・ゴールドスタインは語る。彼の説明によると、石油会社は定期的に事業計画を更新し、最新の経営環境を反映させているという。「彼らは役割を果たすべく定められた世界の中で活動しなければなりません。つまり、彼ら自身がその世界をデザインすることはできないのです」
石油会社は、エネルギーを大量に消費する掘削装置やパイプライン、製油所などを動かすのに掛かる経費の削減を図る必要もあって、省エネ促進に立場を変えた、とワーナーは言う。「石油会社は、自らのエネルギー消費を減らせば減らすほど、最終損益が良い結果となります。加えて、カーボンフットプリント、すなわち、温室効果ガス排出量を減らすこともできます」
石油会社は、事業運営を通じてこうした教訓を学び、その専門知識や技術をエネルギー効率の改善を必要としている他社へ売り込むための子会社を設立した。米国エネルギー効率経済評議会の事務局長、スティーブン・ネイダルはこう説明する。「彼らは自らをエネルギー企業と考えており、単に『石油列車』に乗っているだけでは満足できないのです」
「入手可能な価格のエネルギーを求める市民たち」という市民団体の代表、ジョン・ホフマイスターによれば、石油業界のこうした外部向けの対応は、自らの過去の広報活動の失敗の副産物であるという。2005年から去年まで米国シェル石油の社長を務めたホフマイスターは、石油会社は1990年代から2000年代初めにかけて、米国の消費者と政治家にエネルギー供給がひっ迫していることを教えず、その信頼を失ったと言う。
ゴールドスタインは、石油会社の宣伝活動は市場におけるシェア獲得競争の表れであり、1960年代に自社のガソリンを買ってくれたドライバーにガラス製品のギフトを配ったのと同じようなものだと言う。「彼らは皆基本的には『環境問題意識の高い会社だ』と見えるよう努めているだけです。なぜなら、顧客がそれを期待していると考えているからです。これは必ずしも省エネがもたらす経済的利益を考慮したものではなく、政治や世論の圧力が非常に大きいのです。今日、立ち上がって、省エネやエネルギー効率化に『ノー』と言う人は誰もいませんから」と彼は言う。
連邦議会は、省エネとエネルギー効率化について、石油会社とは異なるアプローチをしてきた。議会は、今年初めに成立した景気対策法に、あらゆるエネルギー費からさらに高い生産性を引き出すための多様な技術と戦略への投資を消費者、企業、政府に促す奨励策を数多く盛り込んだ。
しかし、法律の成立で、この問題に関する論議は終わったわけではなさそうだ。議会は、今会期の後半に地球温暖化やエネルギーに関する法案を審議する際、エネルギー効率化の問題を再び取り上げる可能性がある。
テキサス州の石油業者、T・ブーン・ピッケンズにとって、エネルギー効率化とは、適切な燃料を適切な方法で使うことである。彼は、米国が発電のためにもっと風力や太陽エネルギーを使い、天然ガスに対するニーズを減らすことを提案している。余った天然ガスは、大型トラック用に回せばディーゼル燃料の使用をやめることができる。そうすれば、輸入石油に対する需要が縮小するというわけである。ピッケンズは自らのホームページで、この戦略は「輸送用化石燃料に最終的に代わる新技術を私たちが開発するまでの時間を稼ぐもの」だと言っている。
ワシントンでエネルギー効率化と代替燃料の利用を提唱する、最も影響力のある人物はバラク・オバマ大統領である。彼はこう宣言している。「何百万もの雇用を創出する新しいエネルギー経済を構築しながら、外国産石油への依存からの脱却を図るのが、私の政権の政策である」
エネルギー効率化のホント (© Patrimonio Designs Limited)
平均的な米国人は、年間500ガロン(1893リットル)のガソリンを使う。平均的な自動車の年間走行距離は1万2000マイル(1万9312km)強である。運転習慣と車のメンテナンスを改善すれば、燃料を10%節約できる。 出典:全米エネルギー教育開発プロジェクト(TheNationalEnergyEduationDevelopmentProject) |
本稿に述べられている意見は、必ずしも米国政府の見解あるいは政策を反映するものではない。
出典:eJournal”EnergyEfficiency:TheFirstFuel”
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。