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米国でお会いしましょうー米国のおいしいサンドイッチのトップ10

米国のおいしいサンドイッチのトップ10
ロブ・ウォルシュ
 

米国の都市と同様、米国の食べ物も極めて多様性に富んでおり、地域によっていろいろなバリエーションがあります。サンドイッチは素朴なメニューではありますが、これほどその多様性を雄弁に物語る食べ物はほかにないかもしれません。ここで紹介するのは、おいしい米国のサンドイッチのトップ10。それぞれ米国のどこかの都市や地域と深いかかわりを持っています。ロブ・ウォルシュはジェームズ・ビアード・ジャーナリズム賞を2度受賞しているフードライター。

サンドイッチと呼ばれる手軽な食事の由来は、英国のジョン・モンタギュー(1718‐1792)、すなわち第4代サンドイッチ伯にちなんでいます。伝説によると、この伯爵は賭け事をしているテーブルの席で食べられるように、薄く切った2枚のパンの間に肉を挟んだ食事を召使に運ばせたのだそうです。

産業革命の間、サンドイッチは家で作って職場に持っていける実用的な昼食として重宝されました。1900年代初期には、スライスしたパンが売られるようになって、サンドイッチの人気はうなぎ登りに上昇しました。

さまざまな地域で愛されている名物サンドイッチの大半は、20世紀初期に登場しています。次に紹介するのは、特に人気の高い10種のサンドイッチです。

 

イーストコーストサブ

サブマリンサンドイッチ(サブサンド)は、細長いパンを縦に切って、さまざまな具材をたっぷり詰めたサンドイッチです。最初に登場したころのサブサンドは、サラミやモルタデッラ、調味料で味付けしたハムなどのイタリア産加工肉の薄切りとチーズを重ねて挟み、さらにレタスとトマトとピーマンをトッピングしました。パンにはオリーブ油のドレッシングが薄く塗ってありました。その後、トマトソースで煮込んだミートボールあるいは「イタリアンソーセージ・アンド・ペッパーズ」を詰めたものを、オーブンで温めて出すホット版サブサンドも登場しています。

サブマリンサンドイッチの名前は、東海岸の造船所で働く労働者から生まれました。同じようなサンドイッチが、ニューイングランドではグラインダーと呼ばれ、ニューヨークではヒーロー、フィラデルフィアではホーギーと呼ばれています。このサンドイッチは東部沿岸地域のイタリア系アメリカ人の住む地区から始まったものですが、今では全米各地に広がり、名前も、ロケット、魚雷、ツェッペリン、プアボーイ(ポーボーイ)など、地域によってさまざまな愛称で呼ばれています。

ニュージャージー州アトランティックシティーのサンドイッチショップ「ホワイトハウス」で、イタリアンミートとチーズのサンドイッチを作る店員たち(Courtesy of the Atlantic City Convention & Visitors Bureau)

ニュージャージー州アトランティックシティーのサンドイッチショップ「ホワイトハウス」で、イタリアンミートとチーズのサンドイッチを作る店員たち(Courtesy of the Atlantic City Convention & Visitors Bureau)

(Courtesy of Emperor Anton/Flickr)

(Courtesy of Emperor Anton/Flickr)

 

ニューオーリンズ・プアボーイ

プアボーイという名前は1929年の路面電車のストライキ中につけられました。ストライキ参加者たちは「あのプアボーイ(かわいそうな男)たち」と同情され、ローストビーフの切り落としなどの残り物にグレイビーソースをかけてバゲットに挟んだサンドイッチが無料で配られました。

しばらくすると、ニューオーリンズの至る所で、レストランや売店が自分たちのサンドイッチを「プアボーイ」(ポーボーイとも)と呼ぶようになっていきました。この街独特のプアボーイはシーフード版で、当時のニューオーリンズではエビやカキが豊富に捕れて値段も安かったので、油で揚げたエビやカキを詰めたサンドイッチがよくありました。ニューオーリンズ・プアボーイを注文するときには、レタスとトマトとマヨネーズを加えるなら「ドレス」、プレーンのままがよければ「アンドレス」と言って頼みます。

ニューオーリンズのストリートフェスティバルで、世界一長いオイスターポーボーイを作る人々(Frank Stansbury/oysterjubilee.com)

ニューオーリンズのストリートフェスティバルで、世界一長いオイスターポーボーイを作る人々(Frank Stansbury/oysterjubilee.com)

 

ガルフコースト・マフレッタ

1890年代、メキシコ湾沿岸の港湾都市に住むシチリア人のパン職人は、シチリア風のパンを手押し車に載せて売っていました。かみごたえのあるシチリアの円形パンはマフレッタと呼ばれ、丸のままか、半分に切ってハムとオリーブを挟んで売られました。

1900年代初期の革新主義時代に、公衆衛生を取り締まる新しい法律ができて、街路で食べ物を売ることが米国全土で禁止されました。1905年ごろ、ニューオーリンズのフレンチクォーターのイタリア人の食料品店が、地元のシチリア人のパン屋からマフレッタを買い、そのパンにサラミやモルタデッラ、プロボローネチーズ、オリーブサラダを挟んで売り始めました。食料品店では、持ち帰り用のサンドイッチを売ると同時に、買ってすぐに食べられるように店内にテーブルも用意しました。

今日では、主にメキシコ湾岸州のレストランやカフェで売られていますが、決定版はやはりフレンチクォーターの食料品店で売っているマフレッタです。

 

フロリダ・キューバンサンドイッチ

キューバンサンドイッチは、キューバンブレッドにハム、ローストポーク、スイスチーズ、ピクルス、マスタード、時にはサラミを挟みます。最近のキューバンサンドは、サンドイッチプレスでチーズが溶けるまで焼かれています。こうしてプレスされて平たくなった独特の形のサンドイッチは、目の詰んだしっかりした食感になります。

しかし、キューバンサンドは初めから焼いて売られていたわけではありません。最初に人気が出たのは、1900年ごろのフロリダ州タンパ近郊のイーボルシティーとキューバで、キューバでは「ミクスト」と呼ばれて、葉巻工場や砂糖精製所の労働者たちのお気に入りのランチでした。

1960年代以降、マイアミはカストロ政権を逃れてきたキューバ人であふれるようになりました。このころに、どのカフェテリアやコーヒーショップにもサンドイッチプレスでトーストされたキューバンサンドが出現したのです。今でもマイアミの名物サンドイッチになっています。

 

フィリー・チーズステーキ

このボリュームたっぷりのホットサンドイッチは、1930年代にフィラデルフィアのホットドッグスタンドで発案されました。鉄板でタマネギと一緒に炒めた薄切りの牛肉を、縦に切ったサブサンド用のパンに挟み、チーズをトッピングして出来あがり。牛肉にマッシュルーム、牛肉にピーマン、牛肉に追加のタマネギ、といったバージョンもあります。プロボローネチーズがパンの奥の方に入っていて、炒めた肉を載せるとチーズが溶けて肉にからまるようになっています。別バージョンとして、完成したサンドイッチに、オレンジ色のプロセスチーズのスプレッド「チーズウィズ」をトッピングしたものもあります。

ランチタイムに、フィラデルフィア・チーズステーキを求める人々の列 (© AP Images/Matt Rourke)

ランチタイムに、フィラデルフィア・チーズステーキを求める人々の列 (© AP Images/Matt Rourke)

 

ニューイングランド・ロブスターロール

ロブスターロールはメーン州で有名になりましたが、ロブスターの捕れるニューイングランド各州や隣接するカナダの大西洋岸諸州ではごく一般的な食べ物です。ロブスターロールは、小さく切ったロブスターの身とネギかセロリを、塩コショウで味付けしたマヨネーズであえ、トーストしたホットドッグロールに挟んで出されます。最高級のロブスターロールになると、ロブスター1匹分の身が入っています。ニューイングランドでは大変人気のあるサンドイッチなので、ファストフード店でもメニューに載っています

メーン州ファイブアイランズのレストランで、オニオンリングを添えたロブスターロールを見せるウェイトレスのレスリー・スペンサー(© AP Images/Pat Wellenbach)

メーン州ファイブアイランズのレストランで、オニオンリングを添えたロブスターロールを見せるウェイトレスのレスリー・スペンサー(© AP Images/Pat Wellenbach)

シカゴ・イタリアンビーフ

ローストビーフのサンドイッチはいくつかの地方の名物になっていますが、シカゴ・イタリアンビーフもその1つ。このサンドイッチはシカゴのホットドッグスタンドで有名になりました。ニンニクのきいた汁に漬けて焼いたローストビーフを薄く削ぎ切りにし、肉汁に浸した長細いロールパンに挟みます。ローストビーフに炒めたピーマンを載せた「スイート」や、ジャルディニエラというスパイシーなピクルスをトッピングした「ホット」を注文することもできます。パンは、肉汁に軽く浸けた「ディップ」、肉汁に2度くぐらせる「ジューシー」、肉汁が滴るくらいの「ソーク」など、好みに応じて選びます。

ロサンゼルス・フレンチディップ

シカゴ・イタリアンビーフと同じように、LAフレンチディップは薄くスライスしたローストビーフをバゲットに挟んで作ります。典型的なシカゴ版はあらかじめ薄切りにしてあるローストビーフを使いますが、ハリウッド版はミディアムかミディアムレアのローストビーフをその場で切って使うのが普通です。パンにはディジョンマスタードを薄く塗り、軽く肉汁をかけてあります。たいていの店では、サンドイッチを肉汁に浸して食べられるように、ローストビーフの肉汁を入れたボウルを添えてくれます。

バッファロー・ビーフ・オン・ウェック

ニューヨーク州西部の都市バッファローでは、ローストビーフサンドイッチにキュンメルウェックロールというパンを使うのが特徴です。ドイツ生まれのパン屋が広めたこの丸いパンは、上にコーシャーソルトとキャラウェイシードが散りばめられています。キュンメルとはドイツ語でキャラウェイ、ウェックはドイツ南部の方言でロールパンを意味します。バッファローの酒場の店主たちが、客にもっと酒を飲ませようと塩味のきいたパンでサンドイッチを作って出したのが始まりです。レアのローストビーフは薄切り、キュンメルウェックロールは肉汁に浸します。ホースラディッシュ、ディルピクルス、フレンチフライ(フライドポテト)が付くのが標準的です。

テキサスBBQブリスケットサンドイッチ

じっくりスモークしたブリスケット(牛の胸肉)は、テキサスのバーベキューレストランの人気アイテムで、その最もポピュラーな食べ方はサンドイッチにすることです。これには2種類あります。1つはスライスブリスケットサンド。バーベキューソースを塗ったハンバーガー用のパンに、薄くスライスしたブリスケットをたっぷり重ね、さらにタマネギのスライスと小さく切ったディルピクルスをトッピングします。もう1つのタイプはチョップブリスケットサンドで、細かく刻んだブリスケットにバーベキューソースを合わせ、その上にやはりタマネギとピクルスを載せます。チョップブリスケットサンドは、ほかの地域で「スロッピージョー」(風味の強いトマトソースで煮たひき肉のサンドイッチ)と呼ばれているサンドイッチによく似ています


*本稿に示された意見は、必ずしも米国政府の見解や政策を反映するものではありません。

*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

 

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