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核兵器のない世界 – 非核兵器国の関与

視点
非核兵器国の関与

 

イルマ・アルグエロ

核軍縮と核不拡散は相互に依存している。この両方の目標 を前進させるには、核兵器の廃絶はすべての国の安全保障を 促進するということを、すべての国が学ばなければならない。 イルマ・アルグエロは、「世界の安全保障のための核不拡散 財団」の創設者であり、理事長である。

核軍縮は、核兵器を持つ国と持たない国との協力にかかっ ている。

核兵器を廃絶しなければならないことは、はっきりしてい る。その理由は、核兵器が壊滅的な損害を引き起こすだけで なく、すでに生活の質が最低レベルにある一部の核武装国の 資源を枯渇させるからである。

核兵器が力や威信、政治的地位の象徴であり続ける限り、 あるいは、国の安全保障に必要であると見なされる限り、国 家は核兵器を諦めることに抵抗するであろう。 従って、核兵器保有から得られると思われている利益の価値を下げることが極めて重要になる。

核兵器はわなであって、贈り物ではない。冷戦時代の2 超 大国はともに、保有する核弾頭を何万発にも増やすことに よってそのわなに陥った。他のいくつかの国も比較的小規模 とはいえ核の増強を図った。これほど膨大な数の核兵器が、 「相互確証破壊」に必要な数の数倍にも達していることが分 かっていたにもかかわらず、抑止力のために欠かせないもの だったのであろうか。

核兵器は製造が難しく費用がかかるが、その解体と破壊の 方がはるかに難しく、費用もはるかに高い。逆説的に言えば、 核武装国は核兵器を保有するが故に、現在、非核保有国より も深刻な核の危険に直面している。

核兵器は、監視し、抑制し、恒久的に見守る必要がある。 つまり、核兵器を保有する国は、自らが持つ核兵器について 極めて大きな責任を負う。核兵器には、技術的な失敗、偶然の出来事、ストレス状態での計算外の使用といったリスクが 常に存在する。さらに、核兵器の保有者は、テロや盗みの優 先的な標的になる。

 

wwwj-ejournals-nuclear13a2009 年7 月、タイで開催された「東南アジア非核兵器地帯委員会」に出席する各国外相(© AP Images/Sukree Sukplang)

オバマ大統領の2009 年4 月のプラハ演説は、核兵器のな い世界への道を主導する決意を示した。他の指導者たちもこ のビジョンへの支持を表明した。同年9 月、国連安全保障理 事会は、核兵器の拡散に終止符を打つための取り組みの強化 を目指す「決議1887」を採択した。これは期待を抱かせる 一歩である。

今や、声明の発表にとどまらず、行動を起こさなければならない。

核武装国による軍縮と、非核武装国における核不拡散には、 相互性が必要である。2010 年5 月の核不拡散条約(NPT) 再検討会議は、すべての国による核エネルギーの平和利用の 権利を保護しつつ、明確に定義付けされた里程標を持つ進路 に沿って、この2 つの目標の実現を並行して推進する機会と なる。

NPT は短期的には強化しなければならないが、核兵器を ゼロにまで削減するには、世界で普遍的に受け入れられ、す べての国家の責任を明確に定義付けできる新たな手段が必要 である。

慎重に考慮してから核兵器を製造しないことを選択する国 は称賛に値するが、これらの国はさらなる措置をとることが 不可欠である。これらの国は、核武装国による核軍縮を後押 しするために積極的な役割を果たさなければならない。その ための協力方法は多数ある。

 

wwwj-ejournals-nuclear13b「核不拡散・核軍縮に関する国際員会」の2008 年会合共同議長を務める日本の川口順子元外相(左)とオーストラリアのギャレス・エバンズ元外相(右)(© AP Images/Rick Rycroft)
  • 軍縮をめぐる重要な問題の実際的な解決策を探るイニシア チブを後援する。例えば、オーストラリアと日本の政府が 後援する「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」は、「核 の脅威を除去する」と題する報告をまとめるなど、さまざ まな研究をこれまでに行っている。
  • 核備蓄の透明性を高めるとともに、武器技術を広めること なく、核兵器の解体と破壊を検証する方法を共同で開発す る。国家が自らの武器を放棄することは、敵対国が同様の 措置を取ったと確信しない限り、難しいことであろう。「核 弾頭の解体を検証する措置に関する英国とノルウェーの共 同イニシアチブ」は、多国間プログラムを通じて、いかに 透明性の確保が可能になるかを例証している。
  • NTP 非加盟の核保有国が、抵抗なく参加できる非公式交 渉を促進する。
  • 自国の領土への核兵器の展開および配備を禁止する。
  • 拡大抑止力の提供を要請するに当たって、核兵器の必要性 を再検討する。実際、多くの国は、同盟関係にある核武装 国の「核の傘」に依存している。しかし、今日では、核に よる対応を必要とするような安全保障上の脅威を定義する ことは困難である。
  • 地域内の紛争削減と信頼醸成に取り組むとともに、核拡散 のリスク削減に向けてのカギとしてその効果がすでに証明 されている、より強力でより信頼できる制度をすべての国 で推進する。
  • 非核地帯の新たな地域あるいは国家グループへの拡大を推 進し、経験とモデルを共有する。
  • 効果を生む長期的な取り組みとして、核軍縮と核不拡散に ついて指導者や国民を教育する。これは、国連総会決議 A/57/124, 2002 がいみじくも要請していることである。

核軍縮と核不拡散は、すべての国の将来に極めて重要な意 味を持つ。この問題に積極的に取り組まなければならないの は、核武装国だけではない。非核兵器国も、この取り組みに 積極的に関与することは可能であり、また、関与するべきで ある。国家間および地域間の協力は、核兵器のない世界を実 現するための原動力なのである。


出典:eJournal “A World Free of Nuclear Weapons”
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

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The Commitment of Non-Nuclear-Weapons States

The Commitment of Non-Nuclear-Weapons States
Irma Argüello, Founder and Chair, Nonproliferation for Global Security Foundation
All countries must learn that abolishing nuclear weapons will enhance the security of all countries.