国務省出版物
核兵器のない世界 – メガトンからメガワットへ
米国とロシア
メガトンからメガワットへ
アンドルー・ニューマン
「メガトンからメガワットヘ」プログラムにより、米国の原子力エネルギーの半分は、解体されたロシアの核弾頭によってもたらされている。アンドルー・ニューマンは、ハーバード大学研究員で、「原子管理に関するプロジェクト」に参加している。
米国の電力の20%は原子力によってまかなわれているが、その約半分はロシアの核兵器1 個から回収されたウランを燃料とする原子炉によって生み出されている。この注目すべき成果は、「メガトンからメガワットヘ」プログラムのおかげである。
1993 年の米露高濃縮ウラン協定によって創設された「メガトンからメガワットヘ」プログラムは、解体されたロシアの核弾頭から回収された高濃縮ウラン (HEU)500 メートルトンを、2013 年までに、米国の商業用原子炉に適した低濃縮ウラン(LEU)に転換することになっている。2009 年12月31日現在、382 メートルトンのHEU が1 万1047 メートルトンのLEUに再生処理されており、これは1 万5000発以上の核弾頭が廃棄されたことに等しい。
プログラムの仕組み
核弾頭の解体に当たっては、高濃縮金属ウランをその核兵器の他の部分から切り離し、細かく刻んでくず状にし、純化および気体への変換を行った上で、爆発的連鎖反応を持続できない同位体を主に含むウランと混合する。このプロセスはダウンブレンディングと呼ばれる。
HEU の転換と希釈はロシアで行われ、それによって生じたLEU は米国内の「米国濃縮会社」(USEC)の施設へ出荷されて、原子炉用燃料に加工される。USEC は1998 年に民営化されるまで、米国エネルギー省の一部であった。
USEC は、ロシア政府の執行代理業者である「テクスナブエクスポート社」(TENEX)から、市場価格より若干安い割引料金でLEU を購入する。USEC はまた、ダウンブレンドされたLEU によって置換された天然ウランの量を元に戻すことも行う。そして、その後で、LEUを燃料として米国のエネルギー会社に売却する。
誰が恩恵を受けるか
「メガトンからメガワットヘ」は、米国の納税者にとっては非常に安いコストで、数千発の/ 多数の核弾頭を解体する金銭的インセンティブを提供し、数百トンの兵器級物質を破壊し、数千人のロシアの原子力産業労働者を雇用している。この取引が行わ れていなかったならば、ロシアの核関連施設からの核拡散のリスクは、はるかに大きなものになっていたであろう。
2013 年以降に向けて
「メガトンからメガワットヘ」は核不拡散の成功物語のひとつであるが、このプログラムは2013 年に終了することになっており、ロシアは自らの軍備計画に必要な量を数百トン上回るHEUを依然として貯蔵している。「ロサトム」(ロシア国営の原子力公 社)は現在の協定の延長に関心を示していない。ロサトム幹部は、米国とUSEC(米国側唯一の執行代理業者)がその経済的な影響力を不当に行使していると 不満を表明し、ダウンブレンドされたロシアのLEU のUSEC の購入価格が市場価格を下回ること、また、1992 年に米国向けのロシアの濃縮ウラン製品にダンピング防止税が課されたことを指摘している。米国が恐れたのは、ロシアが安価なウランで米国市場をあふれさせ るのでないかということだったが、このダンピング防止税は2011 年から、段階的に廃止されることになっている。
一方、ロシア側は時々、商業用原子力市場に対してやや非現実的な対応――例えば、国際市場価格をはるかに上回る「下限」価格を設定するなど――を取ってきた。
現在の取引が終了するもうひとつの理由は、HEUのダウンブレンディングはウラン濃縮よりも利益が少ないため、ロサトムが濃縮ウランを米国の電力会社に直接供給する取り決めを2010 年に結ぶことを期待していることである。
しかし、ロシアが、自ら抱える過剰なHEU のダウンブレンディングを今後も続けることによって、数十億ドルの利益を生み出すとともに、原子力と原子力関連製品の輸出を拡大するという戦略的な目的を 後押しする協定を再構築する方法はある。米露両国は、将来の小規模な核兵器備蓄に必要な量を越えるすべてのHEU を、過剰備蓄であると宣言し、それを原子炉用燃料にダウンブレンドし、商業市場がそれを吸収できる態勢が出来上がるまで原料として監視できる状態で保管し 続けると、宣言すべきである。
本稿に示された意見は、必ずしも米国政府の見解あるいは政策を反映するものではない。
出典:eJournal “A World Free of Nuclear Weapons”
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。
Megatons to Megawatts
Megatons to Megawatts
Andrew Newman, Research Associate, Harvard University
Thanks to the Megatons to Megawatts program, half of U.S. nuclear energy comes from dismantled Russian nuclear warheads.