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核兵器のない世界 – 核不拡散体制の貢献

脅威と約束
核不拡散体制の貢献

ジョージ・パーコビッチ、ディープティ・チョウビーネ

核兵器の拡散を防止するためには、米国、ロシア、中国に新興国を加えた多国間の協力がかつてないほど必要になっている。こうした協力の実現には、核 軍縮と核不拡散の間で取引を行うのを支える方策を工夫することが求められる。ジョージ・パーコビッチはカーネギー国際平和財団の研究担当副所長兼核政策プ ログラム責任者であり、ディープティ・チョウビーは同プログラムの副責任者である。

初めて投下された原子爆弾の強大な破壊力を目の当たりにして、多くの指導者はこの破壊力を抑制する必要性を実感した。こうして、核兵器の不拡散とい う目標が設定され、核拡散防止のための体制づくりに向けての模索が始まった。すなわち、核兵器およびその入手に必要な原材料やノウハウの拡散を防止するた めの、規範や規則、組織、慣行などをセットにして組み込んだ体制の追求である。

そうした体制は1968 年の核不拡散条約(NPT)により整えられたが、NPT は今やその安定性と有効性を脅かす難題に直面している。協力を強化し、われわれすべてをより安全にするためには、既存の核保有国による検証可能な核軍縮 と、非核保有国による核不拡散との間の関係を強める措置をとる以外に方法はない。

核兵器の拡散阻止は米国だけでできることではない。1949年にソ連が原爆を手に入れ、他の国がこれに続く準備を始めるようになると、核不拡散は協 力を通じてしか実現できないものとなったが、これは容易ではなかった。地政学的に敵対関係にある国々の合意が必要であっただけでなく、核兵器保有国は、世 界の大半を占める非核保有国との間で合意点を見出す必要もあったからである。

核保有国に対して核兵器の放棄を迫ることはできなかった。同様に、非核保有国に対しても核兵器を製造する権利の放棄を迫ることはできなかった。核兵 器の拡散防止は、互いに合意した不拡散ルールに基づく体制を通じて行う以外に不可能であった。しかし、こうした不拡散ルールは、既存の核保有国による核の 保有を少なくとも一時的に容認する一方で、「持たざる国」の基本的な利益を満たす必要があった。

最初に何度かつまずきがあった後、米国とソ連は多国間交渉に参加した。後にNPT となる条約の草案が作成された交渉である。米ソ両超大国は、他の諸国の核兵器取得を阻止するという点では利害が一致していた。両国はそれぞれ、多くの非核 保有国に対して保護者の役割を果たしていた。保護を受ける国は、「味方」の超大国が相手側から自国を守ってくれると確信できれば、自ら核兵器を製造せずに 済ますことができた。

 

NPT は1970 年3 月5 日に発効した。同条約は一連の取引によって構成されている。核兵器国は、核軍縮に向けて誠実に努力すること、核兵器およびその製造に必要な手段を非核兵器 国に移転しないこと、ならびに、非核兵器国の原子力を平和目的で利用するという「奪い得ない権利」を認めること、に合意する。その代わり、非核兵器国は核 兵器を取得しないと約束する、というものである。

wwwj-ejournals-nuclear4aインシャスにあるエジプトの原子力研究センター。エジプトは、より有効な査察実施権限をIAEA に与えることに抵抗している (© AP Images/Mohamad al-Sehety)

NPT の下では、核軍縮と核不拡散は相互に補強しあうものでなければならない。NPT を順守する国が増えるのに伴って、各国とも、近隣国や敵対国が核兵器を開発していないと確信すべきであり、従って、核不拡散を決めたことに一層安心すべき である。既存の核保有国も同様に、全面的な核軍縮を視野に入れて、核兵器の備蓄量を徐々に削減できると感じるべきである。

この核不拡散体制は不完全なものであるにせよ、これまで目覚ましい成功を収めてきた。NPT は普遍性が最も高い条約のひとつであり、インド、イスラエル、パキスタンを除くすべての国が加盟している。北朝鮮はNPT に加盟したが、その後脱退した。北朝鮮は核実験を行い、NPT による義務として禁止されている核兵器開発を行なった唯一の国となった。

多くの国は、核兵器を秘密裏に取得する計画を放棄、あるいは撤回した。イラクは1990 ~ 91 年の湾岸戦争当時、核兵器の開発計画を進めていた。孤立と外部からの強制を恐れたリビアは、2003 年に核兵器開発をやめ、国際社会との協調を求めた。台湾と韓国は米国から水面下で圧力を受け、安全を保証するとの確約を米国から引き出した後で、核兵器開 発を中止した。1990 年代初めに米国とロシアが保有する核兵器を削減し、核軍縮を歓迎する気運が醸成されると、ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナはNPT への加盟に同意した。アルゼンチンとブラジルは始めたばかりの核兵器開発計画を停止し、南アフリカは秘密裏に備蓄していた核兵器を放棄した。南アの場合は 主に国内的な理由からだったが、冷戦後の核軍備削減によって規範がつくられ、それがこれらの国を核放棄の方向に進ませたことは間違いない。

2001 年以降、核不拡散体制は、核テロという以前は想像できなかった脅威に対処するための適応を図ってきた。核燃料と原子力技術がテロリストの手に渡らないようにするための取り組みには以下のようなものがある。

  • 米国・ロシアの2 国間協力
  • G8 主要先進国による多国間の取り組み
  • 核テロ防止条約
  • 「核拡散に対する安全保障イニシアティブ」
  • 「核テロに対抗するためのグローバル・イニシアティブ」
  • 国連安保理決議 第1540 号。国連全加盟国に対し、大量破壊兵器、その運搬手段および関連物質の拡散を防止する対策の採択・実施を求める決議

 

残るリスク

こうした取り組みは成功しているものの、現実にはいくつかのリスクが依然として存在している。そのひとつは、核軍縮と核不拡散の相互補強関係が弱ま りつつあるのではないかということである。イランが核兵器能力の取得を禁止する国連安保理決議を無視し、北朝鮮が核兵器を保持し続けると、核不拡散体制へ の信頼は低下し、核拡散が両国の近隣諸国へ拡大する可能性が高くなる。

米国を含む核武装国の懐疑論者は次のように主張している。核兵器を削減しても、包括的核実験禁止条約(CTBT)といった核実験の全面禁止措置を とっても、イランのようなルール破りの国が核兵器を保有するのを阻止することはできないし、ブラジルや南アフリカといった主要な非核兵器国に対して、核不 拡散ルールの実施に協力するよう説得することもできない、と。しかし、歴史を振り返って見ると、このような見方は悲観的過ぎる。

 

wwwj-ejournals-nuclear4b地図上でブラジルのウラン鉱山を指差すロベルト・アマラル大臣。ブラジルは、核拡散防止規則 の強化に抵抗する可能性が高い主要国のひとつである (© AP Images/Victor R. Caivano)

信頼を高める方法はある。すべての国がいわゆる「NPT追加議定書」の受け入れに合意すれば、国際原子力機関(IAEA)は、核物質や核施設が平和 目的から逸脱して利用されていないことを確認するための、さらに有効な査察手段を手にすることができる。これは特にイランにおいて重要であろう。そのう え、各国はIAEA を通じて、核拡散のリスクを高めるウラン濃縮やプルトニウム再処理能力がこれ以上広まるのを阻止するための、新たなルール作りを交渉できる。しかし現在、 ブラジル、南アフリカ、エジプトなど主要非核兵器国は、追加議定書を普遍化する努力、および核燃料の供給を国内から国際的な体制へとシフトさせるための取 り組みを阻んでいる。その一因は、これらの国が、核秩序をさらに公平なものにするための努力が、既存の核保有国によって十分に行なわれていない、と考えて いることにある。

過去の成功を検証すれば、こうした問題にどのように対処すればよいかが分かる。過去の成功の陰には大国間の協力があった。技術の変化や新たな脅威にどのように取り組むかについて、現在の主要大国が一致した見解を持たなければ、核が拡散する可能性は高くなる。

イランの核開発問題をめぐる危機がはっきりと示しているのは、米国、ロシア、中国が協力しなければ、国連安全保障理事会の正当な執行権限を行使させ ることはできないということである。ロシアと中国は米国と比べて、安保理の決定などを守らない国に対して制裁その他の強制的な戦術をとることに消極的であ る。その理由のひとつは、ロシアと中国が、米国は中ロ両国に対する軍事的優位を求めていると感じているからである。こうした懸念が処理されれば、米国とロ シアは、核軍備削減プロセスと戦略対話を通じて協力を拡大し、核拡散が疑われる国に対してより強い姿勢で臨むというコンセンサスを形成することが可能にな る。米国と中国も、アジアにおける核開発競争の防止と地域の安定化に向けた協力体制の構築につながるような、同様の取り組みを開始している。

同様に、CTBT を発効させ、核兵器に使われる核分裂性物質のさらなる生産を交渉によって禁止するためにも、米国、ロシアおよび中国の協力が必要になる。

核軍縮と核不拡散

核軍縮と核不拡散の関係が極めて重要であることは、今後も変わらない。もし、既存の核兵器国が、自らの保有する核兵器を削減しなければ、主要な非核 兵器国は不拡散ルールを強化することに反対する可能性が高い。もし、核兵器が大国・強国であることを示すものとして今後も広く通用するようであれば、ブラ ジル、エジプト、南アフリカ、イランなどの新興国は、核兵器取得に対する制限の強化に反対する可能性がある。たとえ、核拡散による安全保障上のメリットに ついては議論の余地があるにしても(核保有国は、脅威を感じた近隣諸国が自ら核兵器を保有しても、より安全だと考えるであろうか)、公平さについての認識 や国家のプライドを考慮するほうが政治的には説得力が高いこともある。

多国間で核兵器削減を実施するには、まず、核実験をやめ、兵器に使われるすべての核分裂性物質の生産を停止する必要があるであろう。こうした目的を 実現する条約が、インド、パキスタン、イスラエルを核軍縮プロセスに参加させ、その結果としてこれらの国を核不拡散体制に一歩近づけるための、最も可能性 の高い方法かもれしない。

核不拡散、核軍縮、そして第3 の要因である原子力エネルギー取引は、そのいずれかを進めようとすれば、他のいずれかがうまくいかないというトレードオフの状態にあり、それをめぐる緊張 により、それぞれの目的達成に必要な具体的な措置の進展が妨げられている。さもなければ、世界はより安全でより豊かになっていた可能性がある。ひとつある いは2つの超大国がルールを押しつける時代はもう終わっている。最初は米国、ロシア、中国の3 カ国で始まるに過ぎないにしても、多数の国の協力が今や必要だという事実は、ダブルスタンダード(二重基準)があっては、満足できる成果は得られないこと を意味している。少数の国だけに利点があり、その利点を他の国には認めないという状況が続く限り、認められない国は抵抗する。

オバマ大統領はこの問題を認識し、こう結論付けている。核兵器の使用を抑止する最も有効な方法は、核の拡散を止めることであり、核の拡散を防ぐ唯一 の持続可能な方法は、この究極的な目標の達成にどれほど長い時間がかかろうとも、すべての国に核兵器なしに生きようという意欲を起こさせることである。こ れについて、オバマ大統領は2009 年4月のプラハ演説で次のように述べている。

こうした兵器の拡散を抑えることはできない、私たちは究極の破壊手段を保有する国家や人々がますます増加する世界に生きる運命に ある、と主張する人もいます。このような運命論は、極めて危険な敵です。なぜなら、核兵器の拡散が不可避であると考えることは、ある意味で、核兵器の使用 が不可避であると認めることになるからです。

こうした核の恐怖を防ぐため、オバマ大統領は「核兵器のない世界の平和と安全を追求するアメリカの決意」を表明したのである。

参照ウェブサイト:

 


本稿に示された意見は、必ずしも米国政府の見解あるいは政策を反映するものではない


出典:eJournal “A World Free of Nuclear Weapons”

*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

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Nonproliferation’s Contribution

Nonproliferation’s Contribution
George Perkovich, Director, and Deepti Choubey, Deputy Director, Nuclear Policy Program, Carnegie Endowment for International Peace
Cooperation among the nuclear powers on preventing proliferation requires upholding the bargain between disarmament and nonproliferation.