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ボランティア精神 – 難民のシアトル定住

シャーロット・ウェスト

 

ビルマから到着したばかりのリアナ一家を訪れて雑談を交わし、シアトルでの生活に慣れるのを手助けするジャレッド・マイヤーズ(左から2人目)とレイナ・スウィフト(右)(photograph by Jonathan Dodds)

ビルマから到着したばかりのリアナ一家を訪れて雑談を交わし、シアトルでの生活に慣れるのを手助けするジャレッド・マイヤーズ(左から2人目)とレイナ・スウィフト(右)(photograph by Jonathan Dodds)

付せんと米国地図のジグソーパズルのピースが散らばったテーブルを囲んで座る6人の女性。国際救済委員会(The International Relief Committee: IRC)のボランティア、ジェニカ・プレスコットが、ワシントン州は地図のどのあたりかと質問しながら、部屋の中を歩き回る。女性の1人がユタ州のピースを東海岸に置こうとして、笑い声が起こる。

 

IRCは、ブータン出身のこれらの女性とその家族の米国太平洋岸への定住を支援する活動を続けている。「彼女たちがどのような経路をたどってここにたどり着いたかを聞くと、驚かされます。IRCの目標は、難民の自立を手助けすることです」とプレスコットは言う。

 

1933年に創設されたIRCは現在、米国の22都市で難民の定住を支援しているほか、スーダン、エチオピア、イラク、アフガニスタン、ブータンなど40カ国以上で、緊急援助や教育、医療サービスを提供している。2010年には、9,600人の難民の米国定住を手助けし、海外では2万4,500人の難民、亡命希望者、人身売買被害者を支援するサービスを提供した。

IRCのシアトル事務所は1976年以来、30カ国以上から到着した1万8,000人を超える難民がピュージェット・サウンド地区に定住するのを支援してきた。支援の対象となった難民の大部分はブータンとビルマの出身者で、ソマリア、エリトリア、イラクからの少数の難民グループもいる。

 

シアトルでのIRC の活動のほとんどは、管理業務や難民との直接対応に当たる約200人のボランティアによって行われている。

 

ビルマでの民族紛争から子どもを連れて逃れてきた若い母親。シアトルでのより平和な将来に思いをめぐらす(photograph by Jonathan Dodds)

ビルマでの民族紛争から子どもを連れて逃れてきた若い母親。シアトルでのより平和な将来に思いをめぐらす(photograph by Jonathan Dodds)

ボランティアは、「家族の友だち」というプログラムを通じて、難民の相談相手になる。ボランティアにはそれぞれ対応する難民家族が決まっており、週に1回その家族を訪れて雑談を交わし、新しい環境への適応を手助けする。公共交通機関の利用法を教えることもあれば、英語の練習の手助けをすることもある。このほか、仕事を見つけるための講習会で教えたり、若者が学校教育に適応できるよう手助けしたりするボランティアもいる。

 

IRCに属するボランティアの年齢層を見ると、大学生や最近の卒業生から中堅の専門職従事者、定年退職者にまで及ぶ。いずれも社会にお返しをしたいという願望が動機になっている。

「シアトルに引っ越して来てからずっと、地域社会に関わる方法を探していました。少数民族のコミュニティ、特に米国に来てから日の浅い人たちに協力したいと心から思っていました。というのも、平和部隊などで海外へ行った時に経験した文化交流が懐かしかったからです」と、ハイチとドミニカ共和国で平和部隊のボランティアをした経験のあるティルデン・ケラーは語る。

 

ケラーは、ビルマとエリトリアから来た2家族の難民の相談相手を務める。メー一家の7人はビルマのカレン族で、約1年半前にシアトルに着いた。母国では農業をしていたが、その後タイの難民キャンプで10年間暮らした。

 

ケラーによると、彼女とメー一家との関係は当初と比べて徐々に変わってきているという。最初は、一家が住むアパートに電気をつなぐことや銀行口座の開設など実用的なことで手助けをしたが、現在は、一緒に「ブラブラしている」時間が多い。居間に座って「ジャックス」に似たゲームで遊ぶこともある。

 

ケラーは地元の動物園「ウッドランド・パーク」ヘメー一家と行ったときのことを鮮明に覚えている。「タイ村と呼ばれる場所に着くと、彼らは目を輝かせました。子どもたちは村の中を走り回り、すべてが故郷と同じだと私に言いました。彼らが昔の懐かしい生活とつながっていると本当に感じたのは、米国に着いてからこれが初めてだったのではないかと私は思いました」とケラーは言う。

 

レイナ・スウィフトとジャレッド・マイヤーズのカップルが、ビルマ出身で6人家族のリアナ一家に協力するようになったのは2010年9月。スウィフトとマイヤーズは、自分たち以外の人々の生活に直接影響を与えるようなことを2人で一緒にしたいと思っていた。

 

スウィフトとマイヤーズは週に1~2回リアナ一家を訪ねるほか、時にはショッピングセンターや動物園、シアトル中心街へも一緒に出かける。一家を訪ねるときは、英語の練習の手助け、日常生活で困っていることについての話し合い、ゲームをして遊ぶことなどが多い。

 

「一家と初めて会ったときのことを思い出します。私たちはUNOゲーム(カードゲームの一種)を持って行きました。ゲームを始めてから、ジャレッドと私は、それぞれが一家に違ったルールを教えていたことに気付きました。何回かゲームをしているうちに、私たちのイライラは消え始めていました」とスウィフトは笑う。

 

リアナ一家はビルマのキリスト教少数民族であるチン族の出身で、シアトルではビルマ系の教会に通う。同教会では最近、チン族の国家記念日を祝う行事があり、スウィフトとマイヤーズはその日一家に同行した。

 

「リアナ家の人たちは、米国での生活に適応するため厳しい試練に直面していますが、家族全体としていつも前向きにたいへん力強く取り組んでいます。訪問するたびに、家族が1つの単位として力を合わせている姿に感銘を受けています」とマイヤーズは言う。

 

ワシントン大学の学生アリサ・ルースにとっては、IRCでボランティア活動をすることは、何が自分に重要かを見極めるうえで役立っている。彼女はシアトル中心部にあるIRC本部で、第2言語としての英語の上級クラスを週1回教えている。

 

「このボランティア経験によって、教師になりたいという自分の気持ちがはっきり分かりました」とルースは言う。

 

ある朝、ルースはイラク出身の2人の男性のために仕事探しの準備講習をしていた。「仕事は調理、窓ふき、皿洗いといったところです」と彼女は言う。

 

ルースは授業で自分がアラビア語を学んだ経験を生かしている。例えば、「インシャーラー」(「神がそれを望むならば」)といった伝統的な言い方を使ったり、ホワイトボードにアラビア語で自分の名前を書いたりすると、受講生は大喜びする。彼女はこう説明する。「私自身も言語を学んでいることを示すことによって、垣根を取り払うことができます。受講生はたいへん感謝してくれ、一生懸命勉強します」

 

シアトルでは、母国での紛争を逃れてきた難民が、国際救済委員会(IRC)のボランティアの支援を受けて、新しい生活を始めている。(© AP Images)

シアトルでは、母国での紛争を逃れてきた難民が、国際救済委員会(IRC)のボランティアの支援を受けて、新しい生活を始めている。(© AP Images)

 

シャーロット・ウェストはシアトルを拠点に活動するフリーライターで、シアトル大学で歴史学の非常勤教授も務めている。


出典:eJournal The Spirit of Volunteerism”
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

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The Spirit of Volunteerism

Resettling in Seattle
by Charlotte West
The International Rescue Committee helps refugees build new lives in a new land.