国務省出版物
ボランティア精神 – 消防は家族の伝統
インディアナ州ダイアーは、シカゴの南64キロに位置するベッドタウンである。1万6,000人の地域住民を守るのは、3代目のボランティア消防士が率いるダイアー消防隊である。
サド・スタトラーは1987年12月、23歳でダイアーのボランティア消防隊に入隊した。看護学で学位を取得し、大学を出たばかりだった。その22年前の1965年には、父のギャリーが同じ消防隊に入隊している。父はそこで、さまざまな職位を歴任し、隊長も1年間務めた。
スタトラー家がボランティアとして消防活動に参加するようになったのは、1915年のことだった。サド・スタトラーの母方の曾祖父に当たるフィリップ・キールマンがボランティア消防隊に入隊したのである。イー・アイ・デュポン・ド・ヌムール・アンド・カンパニー(デュポン)で化学者として働いていたキールマンは、自分たちの町を守るためにボランティア消防隊を組織した19人の創設メンバーのひとりであった。
「私は消防署の周りで育ちました」とスタトラーは言う。彼の話によると、1960年代、70年代は、消防隊員には血縁や婚姻関係でつながっている人たちが多く、親族でない者も家族同様に親しかったという。
スタトラー自身は消防署で父のあとをついて回りながら消火の仕方などを覚えたが、今は、当時とは時代が違う。現在のボランティア消防士は、入隊の際、1,000時間の訓練を受けることが義務づけられている。そして担わなければならない職責も大きくなった、とスタトラーは言う。現在31人いるダイアーのボランティア消防隊員は、火災、人命救助、自動車事故に対応するだけでなく、医療上の緊急事態にも即応する。消防隊は年間1,100件の通報に対応しているが、その8割以上は救急医療関係である。
スタトラーには妻と4人の子どもがいるが、どの子もまだ消防隊に入隊できる年齢には達していない。ただ、スタトラー自身がそうであったように、子どもたちも消防署のオープンハウスでポップコーンマシーンの係をやったり、事故の負傷者の様子を言葉で描写する訓練に参加したりして、消防活動を身近に感じる環境の中で育っている。
「子どもたちはもう、消火や火の安全な扱いについて良く知っています」とスタトラーは言う。子どもたちには、緊張状態でもパニックを起こさないようにする方法などを教えてきた。しかし、ここまで教育・訓練してきたからといって、子どもたちにボランティア消防活動への参加を押しつける気はない。若い頃、父から与えられたアドバイスをまだ覚えているのだ。
「親が消防隊に入ったから自分も入ろうというのはダメだと教わりました」とスタトラーは言う。「自分で入りたいと思うなら入りなさい。そして入隊したら、いい仕事をしなさい。また、きちんと仕事のできる人にとって代わろうとしてはいけない、というのが父の教えでした」
出典:eJournal The Spirit of Volunteerism”
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。