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アメリカの今を知る:『米国の文化とは何でしょうか?』

デービッド・キペン

「米国文化について500語以内でまとめろって?500語は多すぎるのでは?」というジョークがある。

文学評論家のデービッド・キペンは、米国独特の文化とされているものにも、考えられているよりはるかに深いルーツがある、と指摘する。

文学評論家のデービッド・キペンは、米国独特の文化とされているものにも、考えられているよりはるかに深いルーツがある、と指摘する。

冗談はさておき、米国文化というものはもはや存在しないのではないかという現実がある。インターネットのおかげで、おそらく北米以外の大陸から発せられたであろう「米国の文化とは何か」という質問に答えるために、私が北米大陸で書いたこのエッセーを、別の大陸にいる読者が読むことができるようになっている。それは取りも直さず、それぞれの国の文化を守ってきた番兵が著しく減ってきたということである。この章では、米国民の大半が米国で生まれた文化であると考えているミュージカル・コメディー、ジャズ、そして探偵小説という3つの芸術形式について考えてみたい。

今ブロードウェーで一番ホットで、トニー賞各部門の有力候補とされているミュージカルは「Fela! 」かもしれない。「Fela! 」は、様々な楽器を弾きこなすナイジェリア人ミュージシャン、故フェラ・クティが主人公である。彼がジャズに与えた影響は、いまだに広がりつつあり、かつての「国民的」文化の解体と並行して、もともと別々だったジャンル同士が混ざり合う様子を示している。以前「アメリカ」文化の城壁を守っていた番兵たちのように、ジャズ、ポップス、そしてミュージカルの境界を守っていた税関吏たちも、とっくにその任務を果たすことをあきらめて、どこかへ去ってしまったのである。 

探偵小説の分野では、米国文化の解体がさらに顕著のようである。この夏、探偵小説に限らず最も前評判の高い小説は、スティーグ・ラーソンの「眠れる女と狂卓の騎士」かもしれない。この作品は、スウェーデン人作家ラーソンのミステリー・シリーズの第3作である。シリーズ第2作「火と戯れる女」は、非社交的で気難しいコンピューター・ハッカー、リスベット・サランデルが主人公で、この小説を原作とするスウェーデン映画が、この秋には米国で上映される。シリーズ第1作「ドラゴン・タトゥーの女」は、スウェーデン人作家の先駆者、ヘニング・マンケルの作品に続いて米国に上陸した。第2作の主人公サランデルは、インターネットを巧みに操る、今の時代の真のヒロインと言っていいようだ。スウェーデン人でありながら普遍的な特性を備えた主人公である。

ここでみんなで手をつないでディズニーの「イッツ・ア・スモール・ワールド」を歌い出す前に(この米国有数の多国籍企業から曲を借りるのに、もうすでに請求書が私の受信箱に届いているかもしれない)、正確を期して指摘しておかなければならないのは、米国の映画スタジオはすでに、英国のリドリー・スコットを監督にしてラーソンの本をすべて英語で映画化する権利を買い取っている、ということである。明らかに、今でも字幕は国境の検問所より難しいハードルであり、またJ・K・ローリング[訳注:ハリーポッターの著者]に聞くまでもなく、シリーズものの小説は魔法のようにお金を生み出すことができるのである。

1970年代のアメリカン・ジャズに影響を与えたナイジェリア人ミュージシャン、フェラ・クティは、芸術を、政府の腐敗に対する抗議活動と融合させた。

1970年代のアメリカン・ジャズに影響を与えたナイジェリア人ミュージシャン、フェラ・クティは、芸術を、政府の腐敗に対する抗議活動と融合させた。

しかし、端的に言って米国文化はもはや米国のものではない。そして本当のところを言えば、米国文化が米国独自のものであったことはないのである。ミュージカル・コメディーの起源はオペラであり、言うまでもなくオペラは少なくともモンテベルディの時代のイタリアやリュリ [訳注:イタリア生まれのフランスの作曲家ジャン=バティスト・リュリ]の時代のフランスにまでさかのぼる。ジャズは、アフリカからカリブ海諸国を経由してニューオーリンズにやってきた。そして探偵小説の歴史も極めて古い。その歴史をたどると、英国を代表する探偵シャーロック・ホームズ、ポーの作品に登場する奇人のフランス人探偵デュパン、ディケンズの「荒涼館」のバケット警部、さらにはソフォクレスのエディプス王にさかのぼり、その先は迷宮入りである。

私は今ロサンゼルスのボイルハイツ地区でこの文章を書いている。イディッシュ語を話していた私の先祖たちが眠るこの地区では、今、英語と同じくらいスペイン語が通じる。アメリカ文化は、そのボイルハイツ地区を縦横に走る4本の高速道路よりも複雑に枝分れしているのである。

デービッド・キペンは最近、セルバンテスの「犬の対話」の新訳をメルビル・ハウス社から出版した。著書に「The Schreiber Theory: A Radical Rewrite of American Film History」(メルビル・ハウス社)がある。現在、全米芸術基金(NEA)の文学担当ディレクターとして、NEAの「ビッグ・リード(The Big Read)」プログラムを管理している。彼の最大の業績は、アナーバー・ブックフェスト・スペリング大会で優勝したことだという。


出典:You Asked: You Asked: What Is American Culture?

*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

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