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気候変動解決へのパートナーシップ – 世界中の専門家を結びつけ、地域の農業課題を解決する

国際協調型アプローチ:事例研究

世界中の専門家を結びつけ、地域の農業課題を解決する

ジェシカ・モーリー

ジェシカ・モーリーは、クリーンエネルギーグループ(CEG)のプロジェクトディ レクター。主にCEGの「国際気候変動技術革新イニシアチブ」に取り組む一方で、CEGが進めているクリーンエネルギー州連合(CESA)――クリーンエ ネルギー技術・市場を支援する各州の事業の連携組織――の活動も補佐している。

ケニアとガーナでの協力プロジェクトは、市場での競争が厳しいため製品開発の加速を必要としている産業が、革新的な技術的解決策を打ち出す上で、中央で調整されたDIアプローチによってどのようにして具体的成果を生み出せるかを実証している。

「アフリカの農業バリューチェーンのイノベーション」は、ゲイツ財団が資金拠出する協力プロジェクトで、ケニアとガーナのキャッサバ、トウモロコ シ、酪農製品の生産・流通における市場障壁――例えば、安全な加工が困難なこと――を取り除くことに重点を置いている。このプロジェクトは、地理的にアク セスが困難な地域での製品開発を加速する必要がある産業において、国際的に調整された協力的アプローチがどのようにして具体的な成果を産むことができるか を実証している。

プロジェクトの中核となるのは、非農業分野の国際的に分散した専門知識を取り込んで、新たな観点から問題を分析するという非標準的なプロセスで、一 種の「開かれた革新」である。この学際的なグループは、バリューチェーンのギャップを解消し、小規模農家のための市場を改善するため、創造的な技術的解決 策を特定し、提言する。この中央で調整された協調的アプローチは、共同研究だけではなく、商品と市場の共同開発にも力を注ぐ。つまり、プロジェクトを別の 研究につなげるのでなく、技術的解決策を開発・展開するための具体的な方策を生み出すのである。

wwwj-ejournals-climate6aキャッサバは、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国では、食糧安全保障の観点からだけでなく、市場で付加価値のあ る商品として取引される可能性のある極めて重要な作物である。しかし、さまざまな制約により、キャッサバ市場の効率化はこれまで進まなかった (Courtesy of Photoshare)

このプロジェクトは、アフリカにおけるキャッサバのバリューチェーンの不備に焦点を当ててはいるものの、扱っている課題のタイプは、多くの途上国の 全農業部門が共有するものである。これらの障壁は、農業活動の力を削ぎ、コストをゆがめ、小規模農家が自分たちの農産物の真の価値を享受することを妨げ る。さらに悪いことに、気候変動はアフリカのみならず他の地域の農業生産能力も低下させる恐れがあり、そうなると貧しい人々が最もひどい影響を受ける。こ のプログラムは、気候変動に関する一部の難題に間接的に対処するものだが、本稿で説明したプロセスは、再生可能エネルギー源の開発など気候変動により生じ る特定のニーズに直接対応するための、その他の解決策の開発にも応用し得るものである。

キャッサバのバリューチェーンは、市場の加速に向けた、開かれた協調的アプローチの成功を示すよい例である。キャッサバは、サハラ以南のアフリカ諸 国では、食糧安全保障の観点からだけでなく、市場で付加価値のある商品として取引される可能性のある極めて重要な作物である。しかし、大きな制約がいくつ かあり、キャッサバ市場の効率化はこれまで進まなかった。

難題の1つは、生のキャッサバの根に潜む毒性のあるシアン化合物である。何百万もの人々が毎日キャッサバを安全に食べているが、シアン化合物は、加 工が不適切だと、吐き気、めまい、嘔吐を引き起こし、時には死に至らせることもある急性中毒などの深刻な健康被害をもたらす。学際的グループが地元の農家 と協力して行ったバリューチェーン分析の結果、いくつかの障壁が明らかになった。

保存:未加工の生のキャッサバの根は、収穫後48時間以内に腐る。このため、農家は買い手が見つかるまで収穫を遅らせる場合があり、大量の農地が必要になる。

加工:数工程に分かれており、それぞれに難しい問題がある。

根の下準備:皮をむき、薄く切り、すりつぶすことがキャッサバを安全に食べる上で重要だが、これらは労働集約的な作業で、機械化されていない。

乾燥:キャッサバの根はその体積の70%が水分であり、乾燥作業が多くのキャッサバ加工品の製造過程で極めて重要な手順の1つとな る。ほとんどの農家は天日干しに頼っているが、これは雨季には難しく、加工と出荷が遅れる。乾燥期間が長くなると、キャッサバにかびが生え、腐ることがあ る。こうした季節的な問題が、年間を通じてキャッサバ製品の価格に影響を与える。

wwwj-ejournals-climate6b細かく砕いたキャッサバ芋を調べるビル・ゲイツと夫人のメリンダ・ゲイツ。「アフリカの農業バリューチェーンのイノベーション」は、ゲイツ財団が資金を拠出する協力プロジェクトで、市場障壁の除去に的を絞った活動をしている (Courtesy Bill and Melinda Gates Foundation)

影響を受ける農家と国際的な科学者チームの協議から、キャッサバの保存と加工の問題について効果的な対策がいくつか生まれた。その一部を以下に紹介する。

  • キャッサバッグ(Ca-Say-A Bag) 袋の内側を2つの成分を持つ裏地で覆い、酸素が入るのを防ぐとともに、袋の中の酸素を吸収することにより、劣化を遅らせる。
  • 機械化 キャッサバの根の皮をむき、すりつぶす技術を開発。
  • 機械乾燥装置の改善および再生可能エネルギー源の利用など、新しい費用効率の高い乾燥方法の採用。

チームが生み出した技術の一例が「キャッサバ・チューブレーター」と呼ぶ小型乾燥機である。さまざまな大きさのキャッサバのチップを強制熱風の入っ た垂直な円筒に投入する。チップは、乾燥するにつれ、軽くなる。そして、チューブの中を上昇して、水分含量が所定の値に達したときに押し出される。これを 用いると、たくさんのチップを乾燥するのに、数日間もかけることなく、わずか数時間で済む。しかも、天日干しよりも衛生的である。また、ディーゼルのよう な高価な燃料を使用しなくて済み、必要なエネルギー源を多様化できる。

トウモロコシと酪農製品に関するバリューチェーンも、生産工程の至る所で同様のギャップと非効率性を示していたが、これらの問題を打開するため、世界の科学者と現地の農家から成るチームは、いくつかの具体的な技術・商品コンセプトを開発した。

このようにして生み出された数百もの革新的なアイデアの中から、22のアイデアがさらなる開発のために選ばれ、5つのアイデアについては、現在、実 施に向けて細部の改善が行われている。コンセプトの1つであるトウモロコシ保存用の改良型プラスチック製タンクについては、見本が作られ、ケニアで利用さ れている。その他のアイデアは潜在的投資家と結びつける作業が行われている。こうしたアイデアは、世界中の分散された専門知識の関与を連携・調整しなかっ たならば、生まれることはなかったであろう。

 

国際協調:農業

  • 厳しい市場において分散型イノベーションのアプローチを調整する
  • 世界中の非農業部門の学際的専門家を関与させる
  • 創造的だが実用的な技術的解決策を特定し、推薦する
  • 実施に向けた検討対象となる具体的な商品モデルを提示する
  • 他の産業および部門でも再現できるよう、商品開発プロセスを精緻化する

 


※本稿に示された意見は、必ずしも米国政府の見解あるいは政策を反映するものではない。


出典:eJournal”ClimateChangePartnerships”
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。


 

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