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気候変動解決へのパートナーシップ – 気候変動への革新的でローカルな解決策を生みだす「エコスクール」

世界から地域へ型アプローチ:事例研究

気候変動への革新的でローカルな解決策を生みだす「エコスクール」

ホリー・ワイズ

「エコスクール」のようなイノベーション・パートナーシップは、低炭素経済への移行の促進や、地球規模の気候変動への不可欠な対応として炭素排出量削減を政策目標に掲げる政府への移行の促進を目指す他のイノベーション・パートナーシップにとっても、活用できる資源である。

エコスクールは、学校が低炭素生活の概念を自らの学校運営と地域社会に応用するのに役立つ、官民パートナーシップである。生徒と教職員と地域住民は、実践活動に重点を置きながら、気候変動と持続可能な開発の意味合いを学ぶ。

このパートナーシップにより、約50カ国の3万2,000校が、各国の中央・地方政府と連携して活動する非政府組織(NGO)と結びついている。この国際プログラムは、環境教育を通じての持続可能な開発の促進を目的とする国際的な非営利組織「環境教育基金」(FEE)が、1994年に始動させたもので、民間企業に参加してもらうため、国際ビジネスリーダーズフォーラムとも手を組んでいる。

多くの国でエコスクールは、部門横断的なパートナーシップを生み出し、そうしたパートナーシップが学校やより広範な地域社会でイノベーションを創出・促進している。学校は、設計・建材・通学パターン・給食に関連した、低炭素化のための解決策を試す実験場になる。そこで行われる実験が、人々の意識を高め、低炭素化に向けて投資を再構築する機会を提供する1つのメカニズムとして機能するのである。

エコスクールは、「従来通りのやり方」の枠を超えた新しい事業運営方法の開発に重点を置いた、気候変動に対応するためのイノベーション・パートナーシップの一例である。イノベーション・パートナーシップは、新しいビジネスモデルや運営モデル、製品、サービス、および市場の創造と拡大に力を注いでいる。気候変動問題への取り組みでは、中核となるビジネス慣行を変革し、多くのパートナーを引き込むことで、イノベーションのリスクとコストを減らすことに重点を置いた活動をしている。

例えば、英国のサンドイッチ・テクノロジー・スクールは、エコスクールを通じて、その運営のあり方を改善した。同校は、風力タービンやその他の再生可能エネルギーシステムを導入・設置するなどして、学校運営と教育へのアプローチを変革した。排出される炭素が環境に及ぼす影響を低減する一方で、経済・社会・環境の面で利益を生み出し、持続可能性向上のモデルを地域社会に提示したのである。

エコスクール・モデルには2つの際立った特徴がある。1つは、イノベーション・パートナーシップとして、学校に対してその中核となる運営業務の変革を促し、学校にかかわる人々を動員して気候変動への実際的な対応を取らせること。2つ目は、すべてのパートナーが対等な立場で参加しており、地域から世界へとつながる連携であるという点だ。

FEEは、参加メンバーが共同行動を通じてそれぞれの目標を追求できるような枠組みを提供する。参加組織は、単独では低炭素生活への移行を実現することはできないことを認識する。この「地域から世界へ」というFEEの構想は自動車大手のトヨタや金融サービスのHSBCなどの企業の関心を呼び、エコスクールプログラムは今、こうした企業から資金援助と技術支援を得ている。パートナーの企業からすれば、このプログラムを通じて、それぞれが抱くグローバルな願望を、エコスクールのような、低炭素製品・プロセスの採用に焦点を絞ったローカルな事業活動と結びつけることができるのである。この他の国際的なパートナーとしては、国連環境計画(UNEP)や欧州連合(EU)がある。

エコスクールの日々の業務の執行・運営については、FEEの要件により、各国とも1つの国内NGOがコーディネーターとして活動することになっている。そして全コーディネーターが年に1度集まって、方針や企画に関する問題、新しい構想、懸念事項を話し合う。こうした会合は、世界的あるいは国際的なパートナーを新たに勧誘する機会であると同時に、プログラムの自主管理と品質管理の1つの方法ともなっている。

エコスクールプロジェクトは、地域・国内・国際レベルで、資金やボランティア、現物支給による支援を引き寄せており、50カ国で成功裏にプログラムを運営している。各国のコーディネーターは、プロジェクトが資金に困ることのないよう、企業、公的機関、NGOの間の部門を越えた連携の仲介に一役買っている。すべてのパートナーが、学校をエコスクールに転換させるすべての段階において支援するのである。

wwwj-ejournals-climate4aエコスクールは、設計・建材・通学パターン・給食に関連して、低炭素化のための手法を試す実験場となることが多い。そこで行われる実験が、人々の意識を高め、低炭素化に向けて投資を再構築する機会を提供する役目を果たしている(CourtesyPolishEnvironmentalPartnershipFoundation)

廃棄物管理を専門とする英国のNGO「アーバンマインズ」は、イングランドのハリファックスでエコスクールへの転換のまとめ役を務めた。このプロジェクトは「トレッド・ライトリー(そっと歩こう)」と呼ばれ、ハリファックスの子どもたちに、エネルギーをもっと効率的に使うとともに、自宅と学校でのリサイクルを通じてゴミを減らすよう促している。プロジェクトにはスコットランド・ハリファックス銀行も参加しており、リサイクル、エネルギー、持続可能性教育に関する地元の学校の新たな取り組みを支援している。「地域社会が本当の意味での当事者意識を持ち、環境に対して永続的な責任を果たす。そうなれば成功だと私たちは考えています」と、アーバンマインズのジル・テータム最高運営責任者は述べている。

こうしたタイプの協力は、参加校と各国コーディネーターが他の国のエコスクールプログラムにも貢献し、そこから学習するのを後押しする。例えば「エコスクール環境と革新プロジェクト」は、トヨタが主催する国際コンテストであり、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、ポルトガル、トルコの学校が参加している。同プロジェクトは、参加各校に自分の学校が環境に及ぼす影響を減らすための独自のイノベーションを開発するように呼びかけるものである。

トルコのアンカラにあるOdtüGelistirmeVakfiÖzelIlkögretimOkulu小学校は、2010年のコンテストで「ITakeResponsibility(私が責任を持ちます)」というプロジェクトで優勝した。それは、教室で使う電気について生徒に直接、責任を持たせ、一部のホテルの客室で使われているようなカード式の電源スイッチを各教室に取り付け、各クラスで1人、カード担当の生徒が責任を持ってカードを持ち歩く、というものであった。このプロジェクトと省エネルギーというテーマが学校全体のカリキュラムに組み込まれ、その結果、学校全体の電気料金が減り、すべての人にとって環境の改善がみられた。

wwwj-ejournals-climate4bエコスクールプログラムの祝賀会に参加するポーランドの少年。優秀校には、環境分野での優れた功績のシンボルとして国際的に認められている「グリーンフラッグ(緑の旗)」が授賞式で贈られる(CourtesyPolishEnvironmentalPartnershipFoundation)

エコスクールのようなイノベーション・パートナーシップは、低炭素経済への移行の促進や、地球規模の気候変動への不可欠な対応として炭素排出量削減を政策目標に掲げる政府への移行の促進を目指す他のイノベーション・パートナーシップにとっても、活用できる資源である。

 

 

イノベーション・パートナーシップ:エコスクール

  • 部門横断的なパートナーシップを生みだし、学校でのイノベーションを促進する
  • 中核となる業務慣行を変革することに重点を置きながら、イノベーションのリスクを低減する
  • 学校が、近隣住民の生活改善につながる新技術の試験場になることができる
  • グローバルにビジネスを展開するパートナーが、各国の国内組織・地方組織と連携する
  • 参加校が、生徒の考案によるイノベーションの最優秀賞を国際間で競い合う

※本稿に示された意見は、必ずしも米国政府の見解あるいは政策を反映するものではない。


出典:eJournal”ClimateChangePartnerships”
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。


 

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