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気候変動解決へのパートナーシップ – 気候変動への適応についてアイデアを共有する「ホテル・パートナーシップ」会員

世界から地域へ型アプローチ:事例研究

気候変動への適応についてアイデアを共有する「ホテル・パートナーシップ」会員

ラファル・セラフィン、サリンダー・ハンダル

国際ツーリズムパートナーシップ(ITP)は、気候変動への適応のためのパートナーシップとして、説得力のあるモデルとなっている。このパートナーシップは、持続可能性に関する差し迫った問題への新たな対応を、企業が業界のパートナーと協力し合って積極的に模索し、学び、策定することができる場を提供するものである。

観光産業は現在、国内総生産(GDP)の世界合計の10%近くを生み出す主要経済部門だが、国際ツーリズムパートナーシップ(ITP)は1992年の発足以来、観光業界において環境に優しいパートナーシップを推進してきた。そのためにITPは、国際的なホテルに働きかけ、現地での物資調達とスタッフ雇用においてベストプラクティスを採用・改良し、適切な廃棄物管理を実施することで、その事業活動の持続可能性と営業する地域社会の持続可能性を向上できるようにしている。さらに、持続可能性を高めるための各社の取り組みを話し合ったり、懸念事項を報告したりするフォーラムとしてITPを利用するよう、会員に勧めている。

ITPは、気候変動への適応のためのパートナーシップとして、国際ビジネスリーダーズフォーラム(IBLF)が設立したものである。IBLFは、持続可能な開発を追求するなかで直面するさまざまな難問への革新的な解決策を、ビジネスリーダーたちとの共同作業で見いだしていこうとする国際非営利団体で、ITPはホテル・旅行・観光業界に、気候変動問題への実用的な解決策を生み出すための知識の提供を目指している。

本号に掲載の記事「グローバルな資源、ローカルな解決策」で概説されているように、適応のためのパートナーシップは、気候変動問題に関する認識を広め、パートナーが開発機会とコスト削減の機会を見極めてそれを活用できるよう支援することで、パートナー間の連携を育むものである。活動の重点は、地域社会と、そこで事業を展開する企業とが気候変動のもたらす影響に効果的に対応できるよう、両者を結び付けることである。パートナーは協力し合って、各地域の優先事項の変化に対処し、前進するための新しい道筋を見いだし、情報の共有を推進することができる。

ITPはこれまで送り出してきた数々の刊行物を通じて、この使命を遂行している。これらの刊行物の目的は、事業活動を「環境に配慮したものにする」ための実用的な解決策に関する情報を会員に提供し、各会員の経験を小規模ホテルとも分かち合うことにある。例えば、「ホテルのための環境マネジメント」は、1993年以来、環境に優しい、持続可能な宿泊施設業務を実現するための情報を提供してきた。これと同様の目的で開設されたウェブサイトに「GreenHotelierWeb」がある。また、「持続可能なホテルの立地・設計・建設」という手引書は、ITPがNGOのコンサベーション・インターナショナルと共同で2005年に刊行したものである。

ホテル産業は本来、宿泊客に休養とくつろぎを提供するものであるため、水や廃棄物処理サービスなど地元の資源を使い過ぎてしまうリスクが他の業界よりも大きい。自宅にいればそうした資源の無駄遣いをしない人でも、ホテルに泊まると使い過ぎてしまう傾向がある。そこでITPが実用的な解決策を提供する。例えば、客室のシャワーの水に空気を加えて、圧力を維持しつつも使用する水量は減らす、といった方法である。宿泊客にタオルやリネンの再使用を呼びかけるのも、ITPが奨励してきたアイデアである。

ITPはまた、参加しているホテルに、業務を展開する地域を重視する活動を働きかけるプログラムも提供している。例えば、「ユース・キャリア・イニシアチブ」(YCI)というプログラムは、落ちこぼれになる恐れのある18歳から24歳の高校卒業者を対象に、多様な産業で仕事を得るのに必要な技能を提供している。YCIは「ドイツ技術協力公社」(GTZ)、「ワールドビジョン」、「マリオット・インターナショナル」などのパートナーと協力して、6カ月間の研修プログラムを11カ国で行っている

ITPの運営機構は、意思決定に透明性を確保するように作られており、また、会員がITPの方向性について影響力を行使できるようになっている。こうした運営機構のおかげもあって、ITPが企画するプログラムは、各会員が最大限の利益を引き出せるような内容となっている。ITPの中核チームは、ITPによる業務支援を理解してもらえるよう、会員との関係を深めることに多大な時間を割いている。

wwwj-ejournals-climate3a国際ツーリズムパートナーシップは、客室のシャワーの水に空気を加えて、圧力を維持しつつも使用する水量は減らす、といった実用的な解決策を生み出している。宿泊客にタオルやリネンの再使用を呼びかけるのも、ITPが奨励してきたアイデアである(CourtesyMarriottCorporation)

写真内のテキスト:当ホテルは環境保護に協力しています。交換ご希望のタオルのみを、バスタブの中か床の上にお置きください。

ITPの会員は会費を支払うことによってその運営費を負担する。見返りとして、ITPが持つ資源を利用することを認められ、グループとしての優先事項にも影響力を及ぼすことができる。この運営モデルは、運営のあらゆるレベルで協力しあうことを重視したものである。「ITPは個別企業の後押しだけでなく、それをはるかに上回る事柄に重点を置いた、類いまれなパートナーシップ・モデルです。環境・開発問題全般についての認識を高めているのです」とITPのスティーブン・ファラント事務局長は語っている。

パートナーと地域社会に対するITPの影響力が最も顕著に現れるのは、ホテルの廃棄物管理の改善と現地における雇用拡大である。炭素緩和プログラムをすでに策定している国際ホテルの多くは、引き続きITPを活用して気候変動の社会的影響の軽減に取り組んでいる。

ITPは、気候変動への適応のためのパートナーシップとして、説得力のあるモデルを提示している。このパートナーシップは、持続可能性に関する差し迫った問題への新たな対応を、企業が同じ業界のパートナーと協力し合って積極的に模索し、学び、策定することができる場を提供するものである。

観光産業において、持続可能性に的を絞った、他に例を見ないパートナーシップに加わる機会があることが、世界中のホテルグループにとってITP参加の強い動機になっている、とファラント事務局長は言う。また「持続可能性の問題はこれからますます重要になるという認識が広まってきたことも、追い風になっています」とも語っている。

 

気候変動への適応のためのパートナーシップ:国際ツーリズムパートナーシップ

  • 観光産業内で、気候変動がもたらすさまざまな課題についての認識を広める
  • 国際ホテルの事業活動の持続可能性向上を可能にする
  • 会員が持続可能性関連の報告を行ったり、懸念事項を話し合ったりするための場を提供する
  • 会員が「環境に配慮した」意思決定をするための指針となる多数の刊行物の出版を継続する
  • 地域社会に直接的な影響力のあるプログラムを運営する

 


※本稿に示された意見は、必ずしも米国政府の見解あるいは政策を反映するものではない。


出典:eJournal”ClimateChangePartnerships”
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。


 

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