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気候変動解決へのパートナーシップ – グローバルな資源、ローカルな解決策:気候変動問題の長期的解決策を可能にする持続的なパートナーシップ

世界から地域へ型アプローチ:概説

グローバルな資源、ローカルな解決策:
気候変動問題の長期的解決策を可能にする持続的なパートナーシップ

ラファル・セラフィン、サリンダー・ハンダル

ラファル・セラフィンは、国際ビジネスリーダーズフォーラム(IBLF)のシニ ア・アソシエイト。IBLFは独立した非営利団体で、世界中の企業とパートナーを組み、持続可能な開発への革新的な道筋を作り出す活動を行っている。サリ ンダー・ハンダルはIBLFの政策・広報ディレクター。連絡先はafal.serafin@iblf.org、 surinder.hundal@iblf.org。

政府、企業、市民社会団体の間のパートナーシップは、気候変動が社会、経済、環境に与える影響に対処するために必要な多くの特性を備えている。温室 効果ガス削減に関する国際的合意が依然として達成できない状態では、こうしたパートナーシップを促進し実現することが必要である。国連主催の気候変動交渉 は継続されるべきだが、この交渉からは部分的な解決策しか生まれないであろう。国連の取り組みは、もっぱら政府という単一の部門の協議により、世界の炭素 排出量を削減するため、万能サイズで指揮統制型の解決策を立案・実施しようとするものである。

パートナーシップによるアプローチでは、資源とアイデア、そして企業、市民社会、政府の各部門の関与を結集することによって、より効果的に、気候変 動への適応を図る上での課題を見極め、解決案を打ち出すことが期待できる。このような部門を超えたパートナーシップは、グローバルな交渉と特定の地域の事 情に合った解決策との間のギャップを埋めるのに役立つ可能性がある。パートナーシップはまた、それぞれの部門が豊富に持つ資源、人間の創造性、創意工夫を 活用することができる。統制・監視・強制に基づく枠組みが、難問に対して革新的で創造的な解決策を見いだすのを抑制してしまいがちなのとは対照的である。

では、どのような方法をとれば、気候変動解決へのパートナーシップは可能になるのであろうか。

炭素排出量削減に向けての合意を各国政府に強く求めていくことが、優先事項の1つでなければならないことに変わりはないが、その一方で、市民社会や 政府、企業のリーダーは、共同行動を起こし、低炭素世界への公平かつ公正な移行を目指すことができる。その必要性と機会は、先進国と途上国の双方で低炭素 ライフスタイルを実現することにある。これはつまり、政府の政策・計画、コミュニティーまたは地域に根ざした活動、社会的起業家精神、そしてビジネスチャ ンスを、創造的かつ相互に補強し合うような方法で結び付けていくことを意味する。しかし、こうしたパートナーシップが効果的であるためには、それぞれが果 たすべき役割を自覚し、各部門の強みを利用できる協力関係でなければならない。

残念ながら実際には、部門を超えたパートナーシップへの期待とその可能性の大部分は、まだ手の届かない状態にあるか、効果のない努力か誤った努力、 あるいはその双方によって無駄にされている。低水準の、十分な成果をあげていないパートナーシップ活動も数多く見受けられる。パートナーシップを装いなが ら、実際は、契約の管理や慈善的な寄付、「従来通りのやり方」の踏襲、あるいは「これをしろ、あれを考えろと他人に指図する」ことと大差のない事例が多 い。IBLFはこの20年間、持続可能な開発のための部門横断的パートナーシップの実現に取り組むなかで、こうした事例を目の当たりにしてきた。

効果的なパートナーシップへの参加者に求められるのは、リスク・コスト・利益の共有を約束すること、透明性を重視すること、いかなるパートナーまた は利害関係者も単独でパートナーシップを乗っ取ることのないよう平等性の確保に努めることである。これら3つの原則を実行することが気候変動に関する協力 関係を確かなものにし、具体的で持続可能な成果をもたらすための鍵となる。

気候変動解決へのパートナーシップには、望ましいタイプあるいは方向性が少なくとも3つある。

緩和パートナーシップ ― 開発の機会を妨げることなく、炭素集約度を低減する方法を探ることに重点を置く。それぞれのパートナーにノウハウを利用する権利を与え、すべての部門のパートナーから学ぶことで、コストの削減に役立て、リスクの分担を促すことが可能である。

一例として挙げられるのが、BPオルタナティブ・エナジー社とポーランド環境パートナーシップ基金(PEPF)との10年にわたるパートナーシップ である。このパートナーシップは、ポーランド国内の中小企業を結集して、企業の環境パフォーマンスを改善し、炭素集約度低減に向けた地域活動への参加拡大 を図り、その過程で地方・国内・国際市場での競争力を高めていく計画を進めている。この「クリーンビジネス」プログラムは、部門を超えた専門知識の共有を 促し、炭素集約度の問題など、環境への影響を評価・監視するメカニズムを提供することで、これまでに5,000社を超える中小企業に利益をもたらしてき た。ポーランドが市場経済と民主主義への移行で混乱していた時期に立ち上げられた同プログラムには、現在、キャドバリーやトヨタのような有名企業をはじめ とする国際企業も参加している。また、市場経済への移行期にある国々に、どのようにして部門を超えたパートナーシップの力を利用し、炭素削減に向けた取り 組みを競争力の源に変えることができるか、そのモデルを示している。

 

wwwj-ejournals-climate1a2009年12月、デンマーク・コペンハーゲンで開催された第15回国連気候変動会議の背景幕 (©AP Images)

適応パートナーシップ ― 状況が変化を続けるなかで、開発の機会をつかむことに重点を置く。パートナーが互いに協力し合って、社会の変化と地域の優先事項が従来とは違ったものになりつつあることを理解し、新たな開発の機会を見極め、地域またはコミュニティーにおける学習を可能にする。

その一例が、IBLFの「国際ツーリズムパートナーシップ」(ITP)である。ITPは、国際的なホテルの事業活動に関して、仕入れやサプライ チェーンから廃棄物管理まで、そのホテルが営業している地域社会の持続可能性を高めるような方法を奨励し、実現を図っている。ホテル側は、ITPに加わる ことにより、事業活動を環境に優しいものにするための実用的な解決策を打ち出すことができ、さらにその経験を、「ホテルのための環境マネジメント」などの マニュアルを通じて、小規模なホテルと共有することができる。このマニュアルには、環境に優しく持続可能な宿泊施設業務を実現するための、信頼できる情報 が提供されている。

ITPは、ホテルが同業者同士や地域社会のリーダーとパートナーになる(逆の場合も同じ)のを支援することによって、世界的にも地域的にも社会と経 済が発展し変化している状況をホテル業界がより深く理解するのを後押してきた。1992年の発足以来、ITPは、国内総生産(GDP)の世界合計の10% 近くを(直接的・間接的に)生み出す産業部門である観光業界において、環境に優しいパートナーシップ文化に貢献してきた。

イノベーションのためのパートナーシップ ― 全く新しい業務の進め方を開発し、「従来のやり方」の踏襲を阻止または陳腐化するような飛躍的な進歩を達成することに重点を置く。こうしたパートナーシッ プは、新たなビジネスモデルや事業運営モデル、新たなタイプの製品やサービス、さらには新たな市場の創出・拡大に努めている。

その一例が環境教育基金(FEE)の「エコスクール」プログラムで、学校を低炭素生活の実践例を示す場、低炭素開発に関する知識の供給源、より広範 なコミュニティーにとってのインスピレーションの源へと変える取り組みを支援している。例えば英国では、サンドイッチ・テクノロジー・スクールが、風力 タービンやその他の再生可能エネルギーシステムを導入・設置するなどして、運営方法と教育へのアプローチを転換した。同校はより広範なコミュニティーに とっての持続可能性の手本となっている。多数の学校の実践的経験を踏まえて、英国政府は、国内すべての学校が持続可能な学校に変わるのを支援すると約束し ている。

エコスクールプログラムは、世界50カ国以上で実施されており、各国の国内で活動するNGOが、政府、地方自治体、学校と協力して運営を行ってい る。プログラムのパートナー企業には、トヨタやHSBCのような国際企業も含まれる。こうした企業は、それぞれが抱くグローバルな願望を地域での事業活動 と結びつけ、低炭素生活に向けた新たな市場と顧客を創出したいと考えている。

エコスクールは、単独のパートナーが管理責任を負うのではなく、すべてのパートナーが低炭素生活への移行を促進するイノベーションへの関心を共有し ているという意味で、地域から世界へ向けたパートナーシップである。学校への投資は大規模なものであり、学校の炭素排出量を減らすことは真の前進になるで あろう。

効果的な気候変動解決へのパートナーシップは、地域と世界を結び付ける。企業、市民社会、政府がそれぞれの強みと資源を結合させることで、こうした パートナーシップは、例えば以下のような活動によって、先進諸国と発展途上諸国のいずれにおいても、気候変動の影響からの地域の回復力を強める手段と機会 を与えてくれる。

  • 建築方法の改善と断熱改修により、燃料貧困の解消を図る。
  • 不適格な住宅とそれに関連する健康上の問題に取り組む。
  • 低公害の公共交通機関と新しい持続可能な輸送計画を、都市部と農村部で開発する。
  • より地域に根ざした自立的な食糧の増産・生産システムを考案する。
  • エネルギー生成、上下水道、資源リサイクル、廃棄物交換(再利用)のための資産を、地域社会が所有・管理することを奨励する。
  • 地域社会が所有・管理する、新技術(バイオ生成やその他の代替エネルギー)を利用したエネルギープログラムを促進する。
  • 人口の移動、移住、多様化に対応するため、地域のコミュニティーと協力する。
  • 気候に優しいコミュニティーのリスク軽減と開発機会を考慮した金融商品・サービスを提供する。
  • 自給自足と持続可能性に重点を置いた地域コミュニティーに求められるインフラを建設・維持・運用するための技術を、貧しい地域の労働者が身に付けられるよう支援する。

市民社会、政府、国内外の企業によるパートナーシップは、民間部門にさらなる関与への欲求を起こさせる。企業は守勢に立たされることがあまりに多 い。しかし気候に優しい地域社会作りに関与し、特に製造施設周辺の環境への配慮をすれば、企業は一層効果的に気候変動解決策の一端を担うことができる。地 域に重点を置くことは、企業自体とその関連施設や従業員が拠点を置く地域社会を安定させることにより、ビジネスに利益をもたらす。気候に優しい地域社会に 暮らす住民は、気候変動からの地域の回復力を強化するのに役立つ技能と能力を吸収し、新しい持続可能な経済発展の機会を生かすことができる。

気候変動解決へのパートナーシップの可能性を実現するためには、民間、公共機関、市民社会のリーダーたちが、ビジネスは私たちすべてが現在と将来に わたって直面する気候変動問題の複雑な解決策の一部になり得る、と認識することが必要である。こうしたリーダーは、すでに世界中の地域コミュニティーや国 際レベルで出現している。自己認識の高いパートナーシップの実践者として行動することで、彼らは分野を超えたパートナーシップを強化し、現在と将来にわた る気候変動問題への取り組み能力を、地域と世界の両方で高めている。

詳細については以下のサイトを参照:
クリーンビジネス:www.cleanbusiness.org.pl
IBLF:www.iblf.org
ITP:www.tourismpartnership.org
エコスクール:www.eco-schools.org
部門横断的パートナーシップ:www.thepartneringinitiative.org

タイプ別気候変動解決へのパートナーシップ
(Vincent Hughes)

気候変動緩和パートナーシップ 開発機会を妨げることなく炭素集約度を低減する
  例:BPとポーランド環境パートナーシップ基金とのパートナーシップ
気候変動適応パートナーシップ 開発機会を利用し、気候変動の影響に適応する方法を見いだす
  例:国際ビジネスリーダーズフォーラムによる国際ツーリズムパートナーシップ
気候変動イノベーション・パートナーシップ 気候変動に対応して、全く新しい事業活動の進め方を開発する
  例:環境教育基金のエコスクールプログラム

※本稿に示された意見は、必ずしも米国政府の見解あるいは政策を反映するものではない。


出典:eJournal “Climate Change Partnerships”
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。


 

 

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