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最良の燃料としてのエネルギー効率 – 海外からエネルギー技術革新を学ぶバージニア

海外からエネルギー技術革新を学ぶバージニア

 

デール・メディアリス

北バージニアと欧州の地方自治体当局者は、地域の環境計画にかかわる革新的な技術の交流に10年以上にわたって取り組んできた。両者は今、このパートナーシップに基づく協力対象分野を、気候変動の緩和・適応策やエネルギー効率化、再生可能エネルギー、環境に配慮した建物に関する政策にまで拡大しつつある。

デール・メディアリス博士は、北バージニア地方委員会(NVRC)の上席環境計画立案者であり、同委員会で気候やエネルギー、国際的な課題に関するプログラムの運営を担当している。NVRCに加わる前は、約20年にわたって米国環境保護庁(EPA)の国際局に勤務し、同庁の欧州および海外向けの都市環境プログラムの運営に当たった。

ワシントン首都圏地下鉄網(メトロ)の利用者は、合計すると1日数十万回も、プラットホームに立って線路を見下ろし列車が入ってくるのを待つ。ホームの上に掛かっている電光掲示板に頻繁に目をやり、絶え間なく更新される情報を確認する。掲示板は乗客に次の電車、さらにその次の電車が到着するまでの所要時間を示している。

メトロの総延長170km。以前は、列車の発着時間に関する情報は、通勤・通学者にほとんど提供されなかった。しかし今では、電車やバスの運行状況についてリアルタイムの情報を知ることができる。公共輸送の計画立案者たちが、ベルリンやストックホルムからそのアイデアを借りてきたからである。

メトロの駅におけるこうした掲示板の設置や、自動車の減速を促進する交通静穏化策の導入、そして便利なカーシェアリング制度は、今やワシントン地区の通勤・通学者の日常の中にしっかりと定着している。フェアファックス郡の住民や歩行者は近隣の街路をもっと安全にしたいと考え、ドイツのシュツットガルトの環状交差路や道路設計に目を向けた。現在開発中の計画により、死亡事故の絶えないある交差点が、歩きやすい、歩行者に優しい街頭風景に変わろうとしている。

バージニア州アレクサンドリアには、ベルリンおよびチューリッヒに倣ったカーシェアリングのプログラムがあり、市民に好評である。確実かつ十全に、しかもあまり費用を掛けずに車を利用でき、置き場、メンテナンス、公害の心配が要らない。同プログラムの成功は、過密交通の被害に悩まされている地域での移動を容易にするだけでなく、「ソフト外交」の影響力の高まりを示すものであり、また大西洋の対岸で生まれた革新的な技術を米国に移転するための実験の場として、州政府や地方自治体が優位に立っていることを示している。

解決策を共有する

NVRCは、首都ワシントンDCの南部と境界を接するバージニア州の地方自治体が組織する評議会で、この地域で暮らす住民の数は約250万人に上る。シュツットガルトでのNVRCのパートナーは、やはり250万の住民を抱えるシュツットガルト地域連合である。シュツットガルト地域連合とNVRCは、それぞれの地域の環境や町づくり、交通などに関する革新的な計画の共有と活用に重点を置いた模範的なパートナーシップを発展させてきた。1998年からは、双方の専門家や政策立案者が集まり、土地利用計画、水インフラ、交通、環境に配慮した設計、および雨水管理の各政策分野で互いに学び合う取り組みを進めている。その結果、北バージニアの環境計画は大きく変貌した。

われわれがシュツットガルトをはじめ、欧州諸地域と協力する理由は簡単に説明できる。ほとんどのエネルギー・気候・環境関連の基準指標で、シュツットガルトなど欧州諸地域は米国の先を行っているのである。例えば、ドイツは1990年以来、国内の温室効果ガス排出量を8%以上減らしている。ところが米国の温室効果ガス排出量は、米国エネルギー情報局によると、同期間に10%以上増えている。さらにドイツの再生可能エネルギー部門は、国内の総電力生産量の12%以上を担っており、1998年から現在までに25万人の雇用を創出している。これに対して米国では、再生可能エネルギーは総エネルギー生産量の3%にも満たない。北バージニアで設置済みの太陽光発電容量は、合計で50キロワット時(kWh)を超えないと試算されている。ドイツのフライブルク駅の持つ太陽光発電容量にも達していないのである。

wwwj-ejournal-energy2aワシントンDC地区を走るメトロのプラットホームの上に設置された電光掲示板。列車の運行状況をリアルタイムで知らせ、乗客は必要に応じて移動の計画やルートを調整できる。(CourtesyWMATA/PhotobyLarryLevine)

北バージニアが、気候変動のもたらすさまざまな課題に立ち向かい、経済成長とのバランスを取りながら、2019年までに見込まれる50万人の人口増に備えた住宅供給と住民のスムーズな交通の確保に取り組む中で、シュツットガルトその他の欧州地域に学ぶ必要性はますます高まるであろう。北バージニアでは、米国の他の地域と同様、温室効果ガス排出量の3分の2以上は「構築環境」から発生している。戸建住宅、共同住宅、商業・公共建築物の冷暖房や、人々の通勤で消費される燃料などがこれに含まれる。米国の各州政府・地方自治体は、建築基準法、エネルギー効率基準、再生可能エネルギー関連の許認可、道路・公共輸送システムの建設・保守を通じて構築環境に対して強大な影響力を行使している。要するに、各州政府・地方自治体は、グローバルなエネルギー政策、気候政策、エネルギー持続可能化政策の中心に位置しているのである。世界がエネルギーと気候をめぐる課題に注目する中で、構築環境に関する知見の交換は不可欠になるだろう。

北バージニアとシュツットガルトは、気候・エネルギー政策における革新的な技術の移転・応用を支援する新たな措置をいくつも取ってきた。2008年、ドイツのハンブルク、エルランゲン、シュツットガルトのパートナーとの間で開いた会合で、短期的または長期的にドイツから北バージニアに移転できる慣行や政策が実に幅広く存在することが再確認された。以下にいくつかの例を挙げる。

地域共同体としてのエネルギー計画づくり:バージニアにおける気候・エネルギー計画づくりに当たっては、ビルや住宅にエネルギー効率の良い設計を幅広く取り入れることや、再生可能エネルギーと従来型エネルギーを効率良く生産し流通させることが、交通・輸送の要所周辺でよく見られる密集した混合ビル用地の活用と合わせて必要である。またこうした対策を支えるものとして、エネルギー効率化と温室効果ガス排出削減についての明確な短期・長期目標の設定が不可欠である。地域共同体としてのエネルギー計画づくりのモデルとなるのは、ハンブルクのハーフェンシティとシュツットガルトのシャルンハウザーパークである。バージニア州のアレクサンドリアやアーリントンなどの都市やワシントン大都市圏は、両者から学ぶことがたくさんある。

再生可能エネルギー:北バージニアでの再生可能エネルギー(風力、太陽光、太陽熱、地熱冷暖房)の開発と普及は、例えば「固定価格買い取り制度」(FIT)など、政府による刺激・奨励策の導入によって促進できる。ドイツのFITは、従来よりも高い買い取り価格を政府が保証するもので、再生可能エネルギーの生産を促進するのに役立っている。

建物のエネルギー性能表示:北バージニアでは、特に建物の改装過程において、エネルギー効率の向上を加速することが可能である。建物に、そのエネルギー効率と性能を表示し広く知らせるエネルギー・ラベルを掲示することが、エネルギー効率化に向けた取り組みをさらに推進する戦略になる。

建物の改装と融資:北バージニアの地方自治体は、公的に管理する設備改善基金の創設を検討すべきである。この基金を使って、再生可能エネルギーを取り入れたり、個人住宅・商業施設の断熱性や耐候性を高めたりする工事に低利または無利子で融資できる。

 

wwwj-ejournal-energy2b平日の帰宅時間、渋滞のため数珠つなぎになってワシントンDCから北バージニアへ向かう絶え間ない車の流れ。この首都圏で車を運転する人は、年間約40時間を身動きの取れない交通渋滞の中で過ごしているとする研究結果も出ている。(©APImages/JacquelynMartin)

克服すべき共通の課題

地域レベルで進行する国際パートナーシップによる取り組みや実績は、見落とされることも多い。米国や世界のメディアは、気候変動に関する多国間政策論争における意見の相違に過度の注意を向けがちである。しかし州政府や地方自治体、地域政府はこれまで、持続可能エネルギー・気候政策に影響を与える点においては、国の政府と同様に重要な役割を果たしてきたし、今後も果たしていくことだろう。各地の地方行政当局が直面する共通の課題はますます収斂(しゅうれん)されてきており、エネルギー・気候問題に対する革新的な解決策を共同で追求し、交換し、移転するための豊かな基盤を形成している。海外の革新的な政策の米国への移転は、今後とも加速すべきものであり、もっと的を絞った持続性のあるものにするべきである。

経済のグローバル化もまた、都市や州の間の結び付き、特に欧州と米国の間の結び付きを持続させ、発展させていくことになるだろう。米国・欧州間の貿易と金融資産投資は、年間の合計で4兆ドルを超えており、数百万の雇用を生んでいる。欧米間の強い経済相互依存は、今後も州・地方行政当局間の学び合いと交流を支えていくだろう。これらのことは、米国の行政当局者にとって、共通の問題について解決策を見いだすために諸外国と連携する動機付けになる。こうした海外交流は、国際関係の改善と各国間の相互理解の増進に寄与するソフト外交のひとつの形である。

結論

オバマ大統領のエネルギー・気候変動担当補佐官であるキャロル・ブラウナーは、気候変動は「われわれがこれまでに直面した最大の課題」であると認めている。これまでに明らかになった科学的知見は、北バージニアもこうした課題と無縁ではないことを明確に示している。その意味で、北バージニアとシュツットガルトのパートナーシップは、同様の問題に直面している世界各地の地域共同体の指導者に対し、国際的なパートナーシップや協力――特に地方行政当局、ビジネス界、そして市民社会組織間の――が、単に有益であるだけでなく、地球規模の気候・エネルギー問題の長期的な解決策を追求し実行する上で極めて重要な意味を持っていることを実証している。


このインタビューで表明されている意見は、必ずしも米国政府の見解や政策を反映するものではない。


出典:eJournal”EnergyEfficiency:TheFirstFuel”
*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

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Virginia Learns Energy Innovations from Abroad

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