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核兵器のない世界 – すべての人にとってより安全な世界

視点
すべての人にとってより安全な世界

 

ジャヤンタ・ダナパラ

核兵器廃絶に関する検証可能 な地球規模の合意は、世界のす べての人を等しくより安全にす る。ジャヤンタ・ダナパラはス リランカの元大使であり、国連 の元軍縮問題担当事務次長。現 在は、ノーベル平和賞を受賞し たパグウォッシュ会議(「科学 と世界の諸問題に関するパグ ウォッシュ会議」)の会長を務 める。

核兵器は、人類によってこれ までに発明された、最も破壊的 な暴力と恐怖の道具である。核 戦争は数百万の人々を殺し、都 市を完全に破壊するばかりでな く、われわれの生命を支える生 態系を荒廃させ、将来の世代に 遺伝的影響を及ぼす。いかなる 国の安全保障も、核兵器の使用 はもちろん、その保持を正当化 するものではない。

2010 年、「ヒバクシャ」、つ まり、最初の、そしてこれまで 唯一の核兵器の使用――第2 次 世界大戦末期の1945 年、米国によって広島と長崎で使われ た――による被害者は、今も続く放射能の影響も含めて自ら の体験を生々しく証言する。

現在、核兵器を保有する9 つの国―― 5 カ国は核不拡散条 約(NPT)に加盟、4 カ国は非加盟――は、2 万3300 個の 核兵器を保有し、そのうち8000 個を配備済みで、数分以内 に発射できる態勢にある。敵対的な意図や不注意による事故 によって、あるいは、国家によって、または国家ではないテ ロ集団によって、こうした核兵器が再び使われることがない とは言い切れない。実際、テロ集団によって使われる可能性 は、極めて現実的な問題と言えよう。核兵器に使われる核分 裂性物質の高濃縮ウランと分離プルトニウムは、その膨大な 備蓄が世界中にあり、たいていの場合、嘆かわしいほど安全 を欠く状態に置かれている。

 

wwwj-ejournals-nuclear12a2000 年のNPT 再検討会議の期間中、ニューヨークで抗議活動をする人々(© Doug Kanter/AFP/Getty Images)

核兵器が使われた場合、その結果は、死、破壊、放射能中毒にとどまらない。科学研究によると、世界にある核兵器のわずか0.03%が使われるだけで、 壊滅的な気候変動が起きるとい う。

各国政府、特に、非同盟運動に加わっている国の政府や、パ グウォッシュ会議などの市民社 会グループは、長い間、核兵器 を禁じる条約の締結を求めてき た。最近、著名な長老政治家た ちの、核兵器のない世界を呼び かける意見記事が、米国その他 の国で掲載された。 バラク・オバマ大統領は2009 年4 月のプラハ演説で、世界か ら核を廃絶することをひとつの政策目標に挙げた。多くの国の 政府や市民社会グループが同大 統領の掲げた目標に支持を表明 した。

核不拡散条約と、主に南半球 に見られる非核兵器地帯は、核拡散の規模を縮小した。けれど も、一部の国は、NPT はその 約束した中心的な取引、すなわ ち、非核兵器保有国による核不拡散と引き換えに核兵器保有国は核軍縮を進めることに失敗 した、と主張している。

こうした状況はいつまでも持続できるものではない。核兵 器を保有する国がある限り、国家の安全保障のため、地位の 象徴として、あるいはテロ行為のため、核兵器の保有を目指す国が出てくるのは必然的である。核兵器のないことが検証可能な世界においてのみ、核不拡散は可能であろう。それが、すべての人にとって、平等に、より安全な世界であり、よりよい世界なのである。


本稿に示された意見は、必ずしも米国政府の見解あるいは政策を反映するものではない


出典:eJournal “A World Free of Nuclear Weapons”

*上記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

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A Safer World for All

A Safer World for All
Jayantha Dhanapala, President, Pugwash Conferences on Science and World Affairs
A verifiable global agreement on eliminating nuclear weapons would make all of the world’s people safer equally.