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ボランティア精神 – 利益を超えて:IBMの企業ボランティア

キャスリン・マッコネル

 

健康な子どもを抱いてすてきな笑顔を見せる母親。IBMの企業ボランティアは、保健医療をナイジェリアでの活動目標に選んだ (courtesy of IBM)

健康な子どもを抱いてすてきな笑顔を見せる母親。IBMの企業ボランティアは、保健医療をナイジェリアでの活動目標に選んだ (courtesy of IBM)

民間セクターで働くことの意味は、企業に利益を上げさせることがすべてではない。地域社会に貢献することも重要である。

 

大手コンピューター企業のインターナショナル・ビジネス・マシーン(IBM)が2008年、同社従業員と発展途上国の政府や非営利組織をつなぐ「企業サービス部隊」を発足させた理由もそこにある。それは、新しい時代の国際ボランティア活動の一環である。

 

ニューヨーク州アーモンクに本社を置くIBMは、この企業サービス部隊に年間6,000万ドルを費やす。「活動の場は、技術、経済開発、雇用創出が交差するところです」とIBMで社会貢献活動担当副社長を務めるスタンリー・リトウは言う。プログラムの開始以来IBMは、アフリカ、アジア、中南米の約50カ国のプロジェクトに合わせて1,400人の従業員を派遣した。リトウによれば、発展途上地域でこれほど大規模な無償奉仕活動をしている企業はIBM以外にないという。

 

企業サービス部隊を通じて、IBMは発展途上国の差し迫った問題の解決を支援する一方で、同社の次世代のリーダーとして優れた技能を持つ人材を見極め、養成することができる。「このモデルを見習う企業は増えるだろう」とリトウは言う。

 

リトウによれば、このプログラムには3つのメリットがある。つまり、対象となる地域コミュニティへの技術支援を行うとともに、従業員に対しては自らの統率力と技能を磨くチャンスを与え、さらに新しい市場への進出を図ることができるというわけである。

 

IBMチームは、技術、科学、マーケティング、財務、事業開発などの専門技能を持つ6~12人の従業員で構成され、ナイジェリアのクロスリバー州やタイのチェンマイ、南アフリカのヨハネスブルクといった地域で、最長1カ月間、現地が抱える課題の解決策の構築に集中的に取り組む。「こうした技能の提供は大きな効果がある」とリトウは言う。

 

遠い国から来た見知らぬ人びとと知識を共有したいという思いが、米国の多くのボランティアに活気を与えている。高齢のボランティアの中には、児童の学習指導や助言役を引き受けている人も多い(©St. Petersburg Timnes/Gail Diederich/The Image Works)

遠い国から来た見知らぬ人びとと知識を共有したいという思いが、米国の多くのボランティアに活気を与えている。高齢のボランティアの中には、児童の学習指導や助言役を引き受けている人も多い(©St. Petersburg Timnes/Gail Diederich/The Image Works)

チームには世界各地のIBM従業員がメンバーとして参加する。彼らは出発前に2カ月半の準備期間を与えられ、一緒に活動することになるメンバーと電話やインターネットを通じて、あるいは直接会って、準備を進める。また、プロジェクトの目標や派遣先の国の文化についての情報も提供される。

 

ヨハネスブルクへ派遣されたチームは、同市の治安インフラ整備のための情報技術の利用法について提言を求められた。リトウはこう言う。「治安は経済発展や住民の暮らしやすさと密接に関連しています。このプロジェクトには、安全、ソフト開発、業務プロセス、行政、法律、財務に関する専門知識を持つ人材が必要でした」

 

ロン・ドンブロスキはIBMのマーケティング担当幹部で、インド、ブラジル、米国から参加した同僚とともに6人のチームの一員としてヨハネスブルクへ派遣された。ドンブロスキによると、チームは犯罪の抑止と救急隊員支援のために防犯カメラを設置すること、また、消防士の緊急通報への対応を容易にするため、消火栓と電源スイッチの設置場所の地図を表示できるスマートフォンなど携帯端末の活用を図ること、などを盛り込んだ5カ年計画を提案した。

 

付き合いの始まり

 

ナイジェリアへ派遣された別のIBMチームは、クロスリバー州の遠隔地の集落に住む妊婦と幼児のための医療プロジェクトに取り組んだ。同チームは各診療所をクラウドコンピューティング環境下でネットワーク化し、指紋読取カードを使って母親と子どもひとりひとりの診療記録を正確かつ完全なものに改善した。これにより、医師は正しい判断をするために必要な情報に素早くアクセスできる。(クラウドコンピューティングでは、組織や団体は別の事業体の余剰サーバー能力を賃借するため、自前のデータセンターを確保する必要がなくなる。)

 

IBMの支援で、クロスリバー州の医療プロジェクトは、サービス提供可能な住民の数を短期間で1,000人から2万人に拡大することができた、とリトウは言う。

 

ジャカルタでは、企業サービス部隊は同市の交通システムの改善を支援している。チェンマイでは、IBMチームが同市の医療観光産業の拡大計画を支援し、フィリピンのセブ島では当局の土地利用計画策定を手助けしている。

 

企業ボランティア活動という考え方は、ダウコーニング、ペプシコ、ノバルティス、ジョンディアといった企業でも受け入れられつつあり、いずれもIBMのモデルに注目している、とリトウは言う。IBMはまた、米国国際開発庁(USAID)およびコンサルタント会社のCDCデベロップメント・ソリューションズと協力して、国際的な企業ボランティア活動のためのウェブサイトの構築を進め、各企業が行うボランティア活動計画に関する情報の共有を目指している。

 

「企業が発展途上諸国の政府や国民と技能や知識を共有すれば、私たちすべての生活が以前より良くなるだろう」とリトウは話している。

ナイジェリアでは、IBMのボランティアから学んだコンピューター技能を生かして、健康教育をより効果的に行うことが可能になった。写真は、ナイジェリアのクロスリバー州で開かれた健康教育ワークショップで、講師の話に熱心に耳を傾ける受講者。ただし、後列の子どもは別 (courtesy of Mathian Osicki & Lisa Lanspery, IBM Corporate Communications)

ナイジェリアでは、IBMのボランティアから学んだコンピューター技能を生かして、健康教育をより効果的に行うことが可能になった。写真は、ナイジェリアのクロスリバー州で開かれた健康教育ワークショップで、講師の話に熱心に耳を傾ける受講者。ただし、後列の子どもは別 (courtesy of Mathian Osicki & Lisa Lanspery, IBM Corporate Communications)

インドネシアの未来を形づくる新技術を紹介するIBMの企業ボランティア

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キャスリン・マッコネルは国務省国際情報プログラム局のスタッフライターである。

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The Spirit of Volunteerism

IBM’s Corporate Volunteers
by Kathryn McConnell
One of the world’s largest computer companies encourages staff to share their skills in developing countries.